52-森の洋館〜錆びた鉄門
錆びた両開きの鉄門が唯一の出入り口だった。
洋館は四方をレンガの塀で囲まれているようだった。
「よっと。かった」
凪元が門を開けようとしたが、少し抵抗があったようだ。
「錆びやばいねこれは」
力強くガンと脚で蹴り、片方の門を開けた。
「鉄の扉なんて今時じゃないからな。もっと軽くて開けやすいアルミが主流だと思うが。これは何風建築なんだろうな」
凪元もわからないだろうが、俺も知らない。別にそこまで興味があるわけでもないしな。
「何風かはわからないけど、門に使われる鉄は普通の鉄じゃなくて、建築資材用の鉄のはすだから、こんな風にめちゃくちゃに錆びてるってことは普通ないんだけどね。もうちょっと耐久年数がホントはあるはず。
ちょっと造りが雑だよね」
……。
ほら、凪元も知らなかった。
いや、凪元は少し詳しかった。
門に使われる鉄が、特別な建築用資材だなんて、俺は知らなかった。
いや、それを知らなかったからと言ってどうなる。別に構やしない。
別に悔しいわけではない。
「そうだな」
鉄の門からはサビの強烈な匂いがした。
門の中は荒れ果てていて、草が伸び放題。館の扉までの道を示していたであろうレンガ製の道も、伸び放題の草に紛れてよくわからなくなっていた。
何年間放置してあるんだろうか。
懐中電灯で照らしても草が見えるばかりで、調べ物ができそうにない。
「何でこんなところに用事があるんだ?」
「ここにね。肝試しに来るバカな小学生や中学生がいるらしいんだよね」
「肝試し……」
オバケこわーい、みたいなアレか?
昔に聞いたことがあったような気もするが、今の今まで全く頭になかった言葉だ。
「そう肝試し。ここ雰囲気ありすぎでしょ?明かりもないし暗いし、昼でも薄暗いし、草も伸び放題。しかももう誰も住んでいない洋館。こんなん、子供たちが度胸試しをするにはうってつけの物件だよね」
「そうかもしれないな」
俺は肝試しをしたことがないからわからないが、確かに雰囲気はある。こう言ったところで、肝試しや度胸試しをすると言われたら納得もする。
「そう。ここでどんな噂が立ってるか知ってる?ここの持ち主だった病気がちなお嬢様が、あそこの窓から恨めしそうにこっちを見てくるんだって」
凪元は懐中電灯の明かりを左上の方に持ち上げ、件の部屋の窓らしいところを照らす。
懐中電灯の明かりも弱いし、周りの明かりもないしで、中まではわからなかったが、確かに大きい目の窓ガラスがありそうなのは分かった。雰囲気で。
「あそこから覗いてくるんだって」
「なるほどな。よく知ってるな」
「調べるのも仕事だからね」
どうやって調べたのかはわからないが、10以上ある窓ガラスからピンポイントで、指していた。かなり深く調べているように思える。こいつ、かなり下見したみたいだな。どれくらいしたんだ?
凪元が玄関のドアノブに手をかける。
すっと捻り、ドアを開ける。
「そっちはすんなり開くんだな」
「肝試しに使われるくらいだしね。小学生中学生がここから出入りするんだから」
そりゃそうか。鍵かかってたら入れないか。
鍵かかってたら窓から入るのかもしれない。
「中は暗いし、足元も危ないから気をつけて」
館の中は暗かった。窓があるのはわかるが、足元は照らさないと何も見えない。照らしたとしてもほんの少し足元がわかるだけだ。
夜にここに来る必要はあったのか?と疑問には思わずにはいられなかった。
昼の方が少しはマシだっただろう。
中はよくは見えなかったが、声の響き方や光の当たり具合からして、中々に広いように感じた。エントランスホール、だとか名前がついてそうな。
外からの光が月明かりと星の明かりと何とも乏しいが、窓から少し入ってくるくらいだ。
足元が見にくいが、埃、埃の上の足跡、蜘蛛の巣があり、小さい虫なども居着いてるようだった。
ネズミも姿を現しそうだった。
「階段登るよ。踏み外したりすると危ないから気をつけてね」
さっきから気をつけてね、しか言ってないんじゃないか、こいつ。
流石に大丈夫だろうと思ったが、見慣れない階段だ。思った以上に大きいものだったので、気をつけないと本当に危ないかもしれなかった。
「そう、さっきの続きなんだけどさ。お嬢様が窓から覗いてるって話。部屋まで行った方がわかりやすいと思うから、部屋まで行こう」
階段にも手すりはあったが、やはり埃でいっぱいだろう。安全のために手すりを利用する気にはならなかった。
階段を上がり、階を上がった先の廊下を歩く。
廊下は外側にまた窓があり、明るかったら外の様子が見れるかもしれなかった。今は懐中電灯で照らすくらいしかできない。窓が所々割れていて、それが更に不気味な様子を醸し出していた。
内側は部屋になっているようだった。いくつもの部屋が連なっている。
見た様子、長い。外から見たように窓の全部が部屋なのだとしたら、結構な部屋数だ。
ある程度行くと、先ほど凪元が明かりで示した辺りであろう部屋、はっきりとはわからなかったが、少なくともそこら辺の部屋のドアの前で止まって身体の向きを変えた。
「ここだよ」
と言ってドアの前に立った。
扉は窓とは違って綺麗だった。よく見ると、ここの部屋のドアだけ、しつらえが豪華なように見えた。
俺が扉周りを確認したのを見届けた後、凪元が扉を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます