47-慣れていることはできる。日々の生活で身についたことが大事だ。


学校の授業が終わってすぐの時間帯だったので4時過ぎくらいで、公園にはまばらに人がいた。

公園の中には通路に通路があり、ジョギングをする人がいたり、犬の散歩をしたりするのには適した場所なのだろう。

道をズレると樹木がわっさと生えているが、人が隠れられるほどではない。

木々の間からすり抜けて見えてしまう。


当然、池崎と古今泉の姿は公園にいる人からも全然見える。

高校を卒業したような若者が、嫌がっている制服を着た女子高生を引っ張っていくのを見られることについて、何も思われなかったのか?


そこまで必死だったのかもしれない。



だが、必死だったからと言って、古今泉の頬が赤く腫れているのを見逃すほど、俺の心は出来ていなかった。


すぐに古今泉から手を離させなければ。


しかし、池崎にとって、古今泉は人質なんだろう。逃げるために、必要な人材として、選んだに違いない。


簡単には離したくないだろう。

言葉で挑発するのは、相手が逆上するかもしれない。

それに俺は言葉遣いがそこまで上手くない。

上手い具合に相手を挑発するなんて出来っこなかった。


「何だてめえ」

その言葉には答えず、そのまま突っ込み、池崎の腕を狙う。

不意打ち気味だったらしく、池崎の反応は少し遅れ、俺の攻撃が当たり、反射的に古今泉の腕を離す。

「いっ」

痛い、と言う暇も与えず、すかさず追撃を入れる。

顔に入れられて池崎は怯んだようだ。

その隙に背後に回り込み、後ろから腕をとった。

「いでででで」

痛みを主張する池崎に構わず、そのまま地面に伏せさせた。

体重をかけ、動けないようにする。

池崎からくぐもった声がした。

相手が得物を持っていないからできたことだ。

何か武器があったら俺もここまで強硬手段は取れなかった。


「……!」

古今泉が何か呟いた。言葉は聞こえなかった。

「古今泉、何もされてないか?」

「うん、大丈夫……だけど」

古今泉は目の前で起きたことがまだ飲み込めていないようだ。

「助けに来てくれたんだ」


「古今泉が連れ去られたと聞いてな。能力の匂いをたどってきた」

「ありがとう」


「頬が……左頬が腫れているが」

「ああ、これは、打たれちゃって」


「そうか」


池崎が抵抗している。

「動くな」

押さえていた膝に体重を更にかける。

呻き声を上げながら少し大人しくなった。


「古今泉、何か縛るもの……持ってないか。買ってきてくれないか」

「うん。けど、財布がない」

「そうか。確かに」

仕方ない。しばらく俺が押さえておくしかない。



「古今泉、申し訳ないが、俺のポケットからスマホを取ってくれないか。右側だ」

と言って、古今泉に回り込んでもらった。

万が一にも池崎が抵抗しないように固める。


古今泉が恐る恐る俺のポケットからスマホを取り出した。

「これでいい?」

「ああ、ありがとう」


「クソ……」

池崎が悪態をついている。自分が倒れている上でやり取りされているのが屈辱なのかもしれない。

「黙れ」

グッと。また力を入れる。

「お前が能力を使えるのはわかっている。能力を使うな。俺は能力を消すことができる」

「どういうことだ……」

池崎は上からのしかかられて満足に声が出せない様子。

「うるさい。とにかく能力を使うな。面倒なんだ」

こいつが能力を使って反抗してきたら勢い余って俺が消してしまうかもしれない。





「古今泉、すまん。今から電話をかけて欲しい」

スマホのロックを外してもらい、部隊の連絡係の人に電話をかけた。

こういうとき、組織の通信機でなくてよかったと思う。組織の通信機だったら、古今泉に通話してもらうことはできなかっただろう。


「何すか〜?」

数コールの後に気の抜けた声女性の声が聞こえた。本当に連絡係のあの人か?と思ったが、俺の方に持ってきてもらった。

「木々村です。池崎を捕まえました。引き渡したいのでこちらに来て下さい」

「え?マジぃ?どこ?」

公園の場所を告げ、今素手でやっと押さえつけてることも伝える。

「おっけー。すぐにそっちに行かせるから、もうしばらく待ってて」


「お願いします」



後は、凪元だ。あいつが荷物を持ってきてくれたらとても助かるのだが。その中に拘束する道具があった気がする。

「画面を見せてくれ」

凪元からはメッセージが来ていたみたいだ。

「いきなりどーしたの?何かあった?」

「回収しとくよ」

「回収したよ」

最後には俺の鞄と制服が写った写真が送られていた。一緒にピースをした凪元も写っていた。

「何だこいつ?浮かれてるのか?」とも思ったが黙っておくことにする。


「古今泉、ここに来るように連絡してくれないか。ああ、俺の荷物と一緒にって」

「うん。わかった」

と言って、古今泉はメッセージを打った。


「これでいいかな?」

見せてもらうと、

「木々村くんの荷物を持って、〇〇公園に来て下さい。」

「ああ、これでいい。後、なるべく早く来てくれって書いておいてくれ」


「はい」

と言って画面を見せてくれた。

「なるべく早く来て」


「ありがとう。大丈夫だ」


よかった、と言って古今泉は笑った。



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