48-よく知らないやつを知り合いに紹介するときの塩梅は、時と場合による




「私、どうしたらいい?」

「ああ、そうだな……」

古今泉がここにいなければならない理由はないんだが……。

そう言えば、古今泉も荷物を持ってない?

無理矢理連れて来られたから、その時に荷物は持っていけなかったのかもしれない。

そう言えばさっき財布がない、とか言っていたな。


「そうだ。友達が心配していた。大丈夫だと伝えるといい」

「あ、そうだ。伝えなきゃ……って、ケータイ

もないんだけど」

あはは、と古今泉は笑った。


「じゃあ、もう戻った方がいいな」

「うん。じゃあ、戻るね」


「ありがとう」

「おう。またな」


「はぁ」

俺が一息入れても、池崎は何も喋らなかった。




しばらくの間、俺が池崎を押さえていた。ひたすらに怠い。

さっきも言ったかもしれないが、夕方前の時間帯なので、まだ人がいる。

大人の上に高校生がずっとのしかかっているという光景が異様なのは流石に俺もわかっていた。

しかし、拘束できるものがないから仕方ない。

通報されないことを祈る。


凪元か、部隊の人か、どちらが先に来るかわからないが、部隊の人が先ならそのまま、引き渡せばいいし、凪元が来たら……まぁ、部隊の人を待つしかない。


5分以上経ったくらいで凪元がやってきた。

よかった。通報はされなかった。

「何やってるの?」

凪元は俺たちを見るなり、そう呟いた。


「俺の鞄からロープを取りたい。カバン開けてくれないか」

「はい」

と、凪元は鞄を開けた状態で渡した。

池崎を足で押さえ、すぐ取り出せるところにあったロープを片手でさっととり、すぐさま後ろから両腕を縛る。脚も縛るか。

これで怠さから解放される。

後は回収に来てくれるのを待つだけだ。


「誰、この人?」

凪元は自然に聞いてきた。

「池崎鯉弥。池崎龍弥と言った方がわかるかもしれない」

「あぁ、あの……とはならないんだよね。誰?何やってる人?」

流石に名前だけじゃ不十分だったか。虎次郎の息子だとかそんな情報はいらないだろうが、もう少し付け加えておく。

「おもちゃ会社の社長の息子だ」

「ああ、なるほど?」

と、先ほどのようにノリツッコミはなかったが、今回もあまり飲み込めてない様子。

「しかし、助かった。お前が来てくれて。しばらくこいつをずっと押さえつけてたんだが怠くてな」

「うん。それは大変だったね。ところで、さっきまで誰かと一緒にいた?」

「何がだ?」

「だってこれ、木々村くんが書いたんじゃないでしょ?」

凪元はケータイの画面を見せてきた。

その文面から判断したようだ。確かに俺が自分自身のことを木々村くんなんて言ってるなら頭のおかしいやつだ。わかるだろう。


「ああ、さっきまで古今泉と一緒にいた」

「そうなんだ。最近、古今泉ちゃんと仲いいよね。この縛られてる人がきっかけ?」

凪元は色々と聞いてくる。凪元は鋭いから、多分聞かなくともわかっているんだろうが。

「そんなところだ」

変に誤魔化すのはやめて曖昧に肯定しておく。


「木々村くんも、僕のこと信頼しすぎでしょ。何で荷物、僕が預かるって思ったのさ。もし僕が帰ってたり、連絡気づかなかったりしたらここまで来てないよ、僕」

「ダメだった場合のこともちゃんと考えてある」

嘘だ。正直に言えば何も考えてなかった。


しかし、ロープは古今泉に買ってきてもらえば時間はかかるが何とかなっただろうし、あるいは、無理すれば俺がずっと掴み続ければよかった。人目が気になりはするが。

荷物に関して言えば誰も盗らないだろうし、仮に盗られたにしても発信器があるから大丈夫だろうと踏んでいた。


凪元が持ってきてくれたからそこまでの時間が省略できたというのは確かであるが。


「ならいいけど」

俺が次善の策を考えていたと言ったことに対して本当に信用しているのかしていないのかはわからないが、凪元はそう言った。まぁ、どうでもいいのだろう。



俺が心配なのは、古今泉の方だった。

池崎を縛ったから、恐らく古今泉を狙うやつはいなくなっただろうとは思うが、池崎に襲われた恐怖はあるだろう。

……そう考えると、俺と一緒にいた方がよかったのかもしれない。

今更ながらに反省する。

気を遣って、帰らせたのだが、逆に良くなかったか。いや、でも、池崎と同じ場所にいるのも嫌だろう。



「ところでこの縛ってる人どうするの?」

「引き取る人が来るからその人に引き渡す」

「ふーん。何やったの、この人?」

「それは……」

と言いかけたが、具体的には何をやったことになるのか?

能力者を集めてた?

乱行パーティを開いた?

古今泉をさらった?

他にも余罪があるかもしれないが、俺が確実に知っているのはこれくらいだ。

「乱行パーティを開いた」

「へぇー……そうなんだ」

流石の凪元も引いたのか、それ以上は追求してこなかった。


池崎が俺の方を睨んでいた。

その恨みがましい視線は無視した。

こいつ、本当に能力使わないな。


「そう言えば凪元、俺の鞄と制服が置いてあった方向の校門に人だかりはもういなかったか?」

「うん。いなかったと思うけど。どうして?」


「いや、俺があそこを通った時には人だかりがいてな」

古今泉の友達の女の子が泣いていた。流石に移動していたか。

古今泉の荷物は誰か動かしたりしないだろうか?

ちゃんと見つけられただろうか?


「そうなんだ。僕が見た時にはいなかったよ」

そうか。後で古今泉に確認しよう。


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