38-反省と叱責
居ても立っても居られず、師匠に連絡を取った。
「話せますか?」
いつもと違う時間だし、どれくらいかかるもんかと思案していたが、案外すぐに応じてくれた。師匠の方から直接通話をしてくれた。
「師匠、いきなり申し訳ありません」
少しの間の沈黙。師匠の第一声は以下のものだった。
「調べたのか?」
師匠はすぐに察知したようだ。師匠は恐ろしく勘がいい。
「……はい」
「そうか。私が何も言わなかった理由もわかったか?」
「はい。師匠が教えてくれた電話番号の会話相手からも金曜日に何をするのかわからなかったので、俺が調べようと思ったのですが……。俺が動いたことにより、古今泉、未来にショックを与えてしまいました」
「古今泉未来に?なるほど。詳しくはわからないが、何となく想像ついた」
「はい」
「悪かった。お前が古今泉未来に傾倒しているってのは気づいていたのに。お前の行動力を侮っていた」
「いや、あの……」
俺は今怒られているのか?呆れられているのか?師匠が俺に謝る?どういう状況なんだ。師匠の意図が読めない。だが、このまま師匠に話し続けさせるのはズルい気がする。
「最初から伝えておいてよかったのかもしれん」
「いえ、俺が師匠の言いつけを守らず……。結果的に古今泉までも傷つけてしまって……」
「古今泉未来が傷ついたのは……何があったんだ?」
そうか。師匠はそこまではまだ、わかってないのか。
「すみません。話します。古今泉未来は能力者でした」
「なるほど。それは私も初耳だ」
「はい。俺も今日、さきほど知りました。古今泉は変身の能力を持っていました。自分が触った相手に変身できるそうです。それで、その能力を使って姉のことを調べたら、知ったようで。俺が、調べてくれと頼みました」
俺が話した途端、呻きが聞こえた。流石の師匠も言葉が出なかったようだ。俺の失態で。
「……お前……。そうか。なるほど。そういう取り方か。それに関してのミーティングは今度必ずやる。私にも反省点がある」
師匠の言葉には怒りの響きも含まれていたが、すぐに落ち着かせて会話を続けてくれた。
「それで、古今泉未来が自分から知ってしまったということか。なるほど。夜遅かったのは、お前がその話を古今泉未来から聞いていたせいか」
「はい、そうです。全てその通りです」
勘が鋭いというより、俺の行動が全て筒抜けというか。しかし、これは師匠が俺のことをわかっている証拠でもある。それは内心とても嬉しいことではある。この状況だからその喜びを俺は素直に感じられない。
「古今泉に直接、姉の痴態について調べさせるようなことになって……」
「そうだな。お前はもっと私の言葉を考えるべきだった。私は一度お前に自主性を育てるために自分から行動してほしい、と言ったにも関わらず、今回は動くな、と言った。
なぜ動かない方がいいのかの理由について述べなかった私にも落ち度はあるかもしれないが、私は念を押して確認した。
お前が私の言葉の意図を考えていたのであれば、その意味まで考えるべきだった」
「はい」
返す言葉もない。痛恨のミスだった。
「起きてしまったことは仕方ない。古今泉未来に対して償いをするのであれば、金曜日にちゃんと役割を果たせ。今回のことで反省をする部分はあるにしても、任務が遂行できないことがあってはいけない」
「はい。申し訳ありませんでした」
「謝るのは後だ。お前は金曜に備えろ」
師匠の言葉は本当に正しかった。俺が師匠の言葉の抜け道を探そうとして自分で調べてしまった。師匠は俺に自分で調べてみろ、などとは全く言ってなかったのに。
今回の師匠の言葉は、本当に言葉通りに、受け取れるまま受け取るべきだった。
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