35-指示待ちの受け身の状態になってしまうが、仕方ないところもある?
「古今泉百々華のことを調べたいと思うのはいいが、私からの連絡が来るまで本当に勝手に動くなよ?」
と釘を刺された。
多分、師匠は俺が勝手に動くと、あるいは、もう動いたと察したのだろう。
やっぱり不審さが溢れていたようだ。師匠の言うように俺はわかりやすいらしい。
それから数日間。
俺の方から話す内容はないから、しばらく古今泉とは話す約束はしなかった。
そのまま学校で何事もなく過ごした。
学校が終わった後、師匠から連絡があった。
「伝えることがある。時間をとれ」
まだ帰る途中だったが、すぐに返事をした。
「いつでもいいです」
と返すとそのまますぐに連絡きた。流石に早すぎる、と思ったが、いつでもいいといった手前、外だったがそのまま出ることに。
「この前の件だ。古今泉百々華のことだが、あいつらの粛清対象にはなってないようだ」
粛清って……不穏な言葉が聞こえた。
「はい。よかったです」
「3日後、突入するそうだ」
「三日後?突入?どこにですか?話が急ですね」
「元々そういう予定だった。私の弟子がごねていると言ったら伝えてきた。良平、三日後空けとけ」
「絶対に空けます」
「わかった。古今泉百々華はお前が回収しろ。やつらに伝えておく」
通話を切ろうとしている?
「ちょっと待ってください。場所とかどういう突入なのかっていう情報が流石にほしいです。あと回収って何ですか?」
「後で資料を送る。わからなかったらあいつらに聞け」
と言って切れた。
マジかよ……いきなり放り出された気分だ。
あいつら?あいつらって誰だ?
しかも、どういうことなんだ?
こんな風に投げ出されるなんて、師匠の気に障ることをしたか……?いや、むしろ何もしなかったが故?
……あり得る。勝手に動くなと言われたから動きませんでした、と言ってそれに対して「本当に動かないやつがあるか!」
ということなのかもしれない。師匠の言ったことをそのまま受け取ってしまうのは危険だということは今までの生活で常々感じてきたことであるのに。
このまま何も知らされませんでした!作戦は決行されました!だとシャレにならないので、俺の方も動くことにする。
動くといっても何も手掛かりは……。
殿子さんに聞くか。
家に帰り、殿子さんがいた。パソコンに向かいながら優雅に紅茶を飲んでいた。
「良平くん、おかえりぃ~」
パソコンの方に視線を向けながら殿子さんは俺に言った。殿子さんのお出迎えに心が和む。
「殿子さん、いきなりで申し訳ありませんが、この辺りで組織の支部ってありませんか?」
「支部はあるよー。あ、それよりもちょっと待っててね。えーと、どこだったかなー……あった。良平くんこれ」
といって画面を見せてくる。
色々と書いてあったが、数字の羅列?だった。暗号か?
「これは、師匠から?」
「そう。さっき送られてきた。これを良平くんに見せろって」
なんだこれは?
「何のことかわかる?」
受信時刻を見ると俺がさっき師匠から通話があった後の時刻だった。
「あ、もしかして、師匠がさっき送るって言ってた資料……?」
「なるほど。それで、これをどうするの?」
殿子さんは俺に尋ねるが、俺自身もどうしていいかわからなかった。
「あ、ここに電話番号みたいなのもあるよ?かけてみる?」
「電話番号……」
そう言えば師匠は後であいつらに聞けと言っていた。
もしかして、この番号は「あいつら」宛て?
組織内の人物と電話のやり取りをするのは珍しいから、もしかしたら組織外の人たちなのかもしれない。
組織内で通話する場合は、基本的に組織の能力で作られた端末で行うようになっている。
能力による通信なので、科学による通信傍受等の心配が少しだけ減るらしい。
詳しくは知らないが。
だが、今回は電話番号が記されていた。
「俺の電話でかけていいのかな?」
「他に何か指定載ってない?」
うーん。目を皿にして読んでみたが、わからなかった。
そしてその考えあぐねている様子を感じ取ったのか、殿子さんは一つのケータイ電話を俺に差し出してきた。いつの間に取り出したんだ、この人。
「心配なら飛ばしのケータイ使う?」
「そんなのあるんですか?」
「一応ね。足がつかないようにって」
じゃあ、と言って俺がそのケータイを使って電話をかけようとすると、俺のスマホの方が鳴った。
そこに表示されていた番号は、俺が今からかけようとしていた番号だった。
「え?」
俺が殿子さんにもその番号表示を見せる。
「かかってきちゃったね」
かかってきたものは仕方ない。
早く電話をとる。
「はい」
「お前かぁ?今度の突貫に一皮噛ませろって言ってるやつはよぉ」
その電話口に出たのは乱雑な口調の女の声だった。
「統括から連絡があってヨォ、お前にも一噛みさせろって言われてよぉ。」
「統括?師匠のことですか?」
「お前、木々村良平だよな?お前に古今泉百々華を任せろって言われてんだよぉ。訳わかんネェよ。
お前が邪魔にならなきゃこっちは何だっていいんだがよぉ」
「はい」
「いいか、一度しか言わねえからしっかり聞いておけよぉ。三日後、〇〇の××で、池崎の息子が集会すんだよ。そこに能力者が集まってるから一気に突貫するんだがよぉ。お前も来い。」
「場所はわかりました。時間は?」
「古今泉百々華も来るらしいから、そっちはお前に任せるぞ。じゃあな。俺は伝えたからな」
と一方的に言って切れた。
……。
どーすんだよ、これ。
「なんか、すごい激しい人だったね」
相手側の声が殿子さんにも漏れ聞こえてたらしい。まぁ、そりゃそうか。漏れ聞こえてそうな音量だった。
「あれは、酔っ払いでしょうか?まだ5時くらいだというのに……」
「仕事が早く終わったんじゃないかな?」
「なるほど。もしかしたらお酒を飲んで気持ちよくなっているところに師匠から言われて機嫌が悪くなったのかもしれないですね」
「それは名推理だね、良平くん」
「いや、適当に言っただけです。ただ、虫の居所が悪すぎた、とかでないと……。素面であれだとしたら怖すぎます」
「あはは、確かにね。あれが素面はやばいよね」
殿子さんが笑った。ウケたようだ。
「で、私にも聞こえちゃったけど、古今泉百々華さん?を任せるってどういうこと?良平くん担当なの?」
「うーん。詳しく話すと長くなってしまうのですが、簡単に言えば、古今泉百々華さんが作戦に巻き込まれないように俺が助けに行く、みたいな感じです」
「なるほどね」
それで殿子さんは納得したようだった。
「ところで、その百々華さんってどんな人?良平くんとどんな関係なの?」
納得したのはブラフだったようだ。いったん引いてからぐいと来られて、俺はドキッとする。
「殿子さんが気になるような関係は全然ないですよ。クラスメイト…じゃなくて隣のクラスの友人のお姉さんです。その子のお姉さんのことについて相談受けてただけです」
「その子ってことは、女の子なの?」
「そうですね、女の子です」
気が気じゃない。
「フーン……なるほどね」
なんですかその意味深な間は。と思ったが言わない。俺が動揺してることを悟られる。
咄嗟に、殿子さんには古今泉のことを知られたくないと思ってしまった。
「どうしたの?」
殿子さんが訝しげに俺に視線を向ける。
俺が何も言わずに考え込んだことに対して疑問に思ったようだ。
「いえ、何でもないです。少し準備します」
古今泉に連絡をしよう。
3日後は金曜日だ。
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