34-依存
あれでよかったのか?
「俺もやれることはやるよ」
とか。
古今泉と話した後の充実感とその後に後悔の気持ちが両方一気にドッと流れ込んできた。
これまでの俺だったらあんな風に勢いで言わなかっただろう。
しかも、なんだ、俺は池崎という名前までも出していた。
古今泉と話している時、俺は必死だった。冷静でなかった。
師匠にこのことを伝えるのか……。
何て伝えればいいのか?
というか何を?
一応俺だって反省する。
師匠に勝手に動くなと言われたばかりだ。
それなのに。
この後報告をしなければならない。
それに、俺は聞かなければならない。
だから、俺は自分の失態を伝えるだけでなく、師匠から情報を聞き出せるようにも持っていく必要がある。
俺が叱られてばかりではいけない。
師匠から「お前にはもう何も話さん!」とお怒りの言葉をもらうようなヘマだけはすまい。
いや、しかし、やっぱり、話さないのは不安だ。
部隊の1人が自分のミスを知られないように隠しただけでその部隊が全滅になることもありうる。
そういうのを聞かされてきたから、やっぱり不安な気持ちは湧き上がる。
一応、言い訳だろうと、俺の言語化できるものは用意しておかなければならない。
たが、気が重いのには変わりなかった。
「今日も何か報告があるのか」
今日も師匠には報告をした。
自分に後ろめたいことがあるときに師匠から詰められた際のプレッシャーはやばい。
師匠が何も勘ぐってなかったとしても、こちらからは全てを見透かされているのではないか?という気持ちになってしまう。
委縮する。
実際、師匠は俺のことをわかっている節がある。
実際のところ、師匠は何かを察知しているので、俺にかかるプレッシャーは言葉にできないほどだった。
何を話すべきか、わからなくなってしまうくらい。
俺は言葉が出てくるままに任せてしまうところだが、ここは何とか踏ん張りたかった。
「はい。申し訳ありません。古今泉と話していたのですが、俺が何らかの組織に所属して動いているということが、感づかれているようです」
「……ああ。まぁ、そうだろうな」
そうだろうな、とは?思っていたのとは違う反応だ。
俺の情報漏洩について叱るかと思っていたのだが、そうではなく、それをわかっていた?
先ほどまで師匠から放たれるプレッシャーのことで頭がいっぱいだったが、今度は師匠からの言葉の内容で頭がいっぱいになった。
「そうだろうなってことは……予想がついてたんですか?」
「そうだな。気付いてないかもしれないが、お前はわかりやすい。それに言動から匂いが抜けきっていない。見る奴が見たら気付くだろうと思っていた」
この学校に入学する前に実は半年間、普通の生活に馴染むための訓練、というか講習を何回かに分けて受けたのだけれど……。それでも俺は抜けきっていなかったようだ。
「……そういえば凪元にも」
「早い段階から気付かれていたんだろ」
「…申し訳ありません」
「それに関しては織り込み済みだ。お前の動きから察する奴が現れても仕方ないと思っている。何か改まって言うからどんなことかと思ったらそんなことか」
「はい」
「追々直していけ。それで、他には?」
「え?……いや」
有無を言わさない、他に何か言いたいことがあるだろうと確信を得ているような物言いだった。
その強さを含んだ言い方に俺は戸惑ってしまった。いつもの俺だったら普通に反応できていたはずだ。
戸惑っている俺に対して師匠は言葉を続けた。
「思いの外怒られなかっただろうに、ホッとした声ではなく、まだ沈んだ返事をしている。私の言ったことが府に落ちなかった訳でなく、まだ言い残してることがあるんだろう」
「そ、そうですね」
お見通しすぎた。あまりに俺のことを理解しすぎている。師匠には何も隠し事はできないと何度も強く痛感したが、今回も痛感させられた。
ここは、要望を言ってしまうか。
「古今泉の姉さんについて調べたいです」
「何かあったのか」
「古今泉と話しました。お姉さんが以前と人が変わったようだって言って、とても心配しています。話を聞く限り普通じゃない変化をしているようです。だから、俺は古今泉の力になりたいです」
もう正直に言ってしまった。
もっと色々と言わなければならないことがあるかもしれないが、これが嘘偽りのない本心だ。
「そうか」
「私の弟子がうるさいと、あいつらには話を通しておく。そうすればあいつらもお前のことを無視はしないだろう」
「ありがとうございます」
あいつらとは誰かわからなかったが、師匠の関係する誰かのことだろう。
「人が変わったと言ったな。百々華はどんな風に人が変わったんだ?」
「はい。それは」
俺は古今泉から聞いたことを話した。
彼氏と別れたこと。夜に出かけて家に帰らない。妹の古今泉と段々と話さなくなってきたこと。
「よくある変化なのでしょうか?」
「何か大きな出来事がれば変わりうる範囲だろうが……。何が起きたのかまではわからん」
「そうですよね」
「古今泉百々華の件に関しては、お前たちが具体的にどうなって欲しいのか?は考えておけ。そして、人の気持ちが関係していることだ。自分の思い通りにならないということもしっかり把握しておけ」
師匠は俺に心構えを事あるごとに伝えてくれる。俺に対しては指示をしてくれる。
弟子だと認めてもらえてる証拠だと思える。
俺は師匠の弟子であることがたまらなく、嬉しいのだろう。
気持ちが晴れやかになった。
師匠に報告する前の気分とは大きく違った。
「はい」
心が温まるのを感じる。
俺にとって師匠は欠かせない人物だ。
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