第27話 オンライン面接の世代は、きっと、こう、思う。「書け、書けっていって、かえって、たくさん書いた人は落とされるんじゃないの?」

 「ごめんなさいねえ。お母さんたち、わがままだった」

 そうだよ。

 わがまま。

 「ハッ…!」

 わかった!

 「私の母は、わがまま」

 そういうこと?

 「母親のママと、わがままのままを、かけました。我が母…それって、わがままな、我がママ」

 ダメだ…。

 私は、本当に、混乱していた。

 その後、数人の女性たちが、部屋に入ってきた。

 同年代っぽい子が、多かった。

 社交性あるアイドルを目指すのなら、他の応募者の女性たちと、あいさつを交わしても良さそうだった。

 でも、できなかった。

 「きっと、皆が、ライバル!」

 「なんちゃって、JK!」

 「お母さんも、集中!」

 「…」

 こわれた青春ドラマの、ように。

 「ああ、それから…」

 どこかにいっていた、謎の箱を担いだ、タキシード蝶ネクタイが、部屋に入ってきた。

 「候補者の皆様は、通知を、お持ちですよね?」

 皆が、無言で、首を傾けた。

 「その紙の、右上に、数字がプリントされていたかと思います」

 その通り。

 各候補者の通知には、数字があった。

 「皆様?通知にある番号が、審査を受ける順番です」

 ああ。

 そういう意味の数字、だったんだ。

 「皆様?通知には、他にも、空欄がございますよね?」

 無言で、応答。

 AIロボットの、集まり?

 「皆様?…用紙の、下の方です。大きな空欄が、あるはずです」

 ああ…。

 数人の、納得のため息が、聞こえて…。

 このとき、ようやく、皆が生きていたんだと納得できた。

 「空欄には、個人アピールを、たくさん、書いてみてください」

 それ、ワナじゃなくて?

 「書け、書けっていって、かえって、たくさん書いた人は落とされるんじゃないの?」

 オンライン面接の世代は、ひっかかりたくはないんですが。

 「ごそごそ…」

 各候補者が、カバンの中に、手を入れはじめた。

 皆、ペンを探して。

 何かのワナじゃないことを、祈っていた。





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