第26話 「オーディションの候補者ら専用室」が、ありました。候補者、ら? …ら?「この部屋は、控え室にすぎません」…あ、そうなんだ?

 アリーナの入り口にいた、背広姿の男性に、いくつか教えてもらえた。

 指定された通路を進むと、ある部屋の入り口に、プリントアウトされたんだろう、きれいな字の浮かんだ紙が貼られていたのが、目に入った。

 「オーディションの候補者ら専用室」

 候補者、ら?

 …ら?

 良かった。

 家族とか友達も、入って良いんだろう。

 「フレ、フレ、レイカ?」

 「ここで、勝つんだ!」

 「レイカ?今日の朝を、思い出して!鮎の塩焼きを、思い出すのよ?」

 「うん。あ…」

 部屋の中が、見えた。

 部屋に入ってすぐのところに、長テーブルが敷かれて、タキシード姿の男性が立っていた。

 受付?

「レイカ?お母さん、恥ずかしいわ」

 「…」

 「何で、そこ」

 「そうですよ、レイカママ」

 「ここは…、初恋の空気ね」

 「レイカママ、マジ?」

 「…うっそ、でーす」

 「…」

 「レイカママって、格好良いな」

 「あら、ありがと。良い友達ねえ」

 「…」

 「…あ、そうだ」

 どうしたんだ、母?

 「レイカ?これ」

 「あ、そっか…」

 母親から、届けられた通知を受けとって、タキシードの人に渡した。

 「レイカさん、ですね」

 タキシードから、攻撃。

 「レイカ、聞いた?」

 「あんたの名前、知ってるっぽいよ?」

 …そりゃあ、紙に、書いてあるから。

 通知は、その場で返してもらえた。

 部屋の中には、まだ、誰もいなかった。

 「私たちが、1番乗りだ」

 「全部で、何人が、くるんだろう」

 「…」

 緊張の、畳部屋。

 これって、楽屋?

 広いな。

 15人は、入れるんじゃないか?

 「漂流教室…?」

 「やめなって」

 「…あ」

 先ほどとは違う男性が、入ってきた。

 こちらの人は、タキシード姿はタキシード姿でも、蝶ネクタイ付き。

 人の頭ほどの箱を、担いできた。

 何の、箱?

 「これから、候補者たちが、この部屋に入ってきます。この部屋は、荷物置き場の控え室です。オーディション会場は、ここではありませんからね。ご安心ください」





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