最終話 ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君(RPG)
遥か昔から、邪悪な力を封じていた伝説の杖があった。
それを封印していた城に、ある道化師が現れ、いとも簡単に杖の封印を解いてしまう。
目覚めた邪悪な力で、城の時間は静止し、国王や姫も姿を変えられてしまう。
一人だけ呪いから逃れた主人公(プレイヤー)は、杖の暴走を止めて、平和な城と、国王と、姫の本来の姿を取り戻せるのか──。
──プレステ2では初となる、シリーズの8作目であり、売り上げは約400万本と、プレステ2で、もっとも売れたRPGでもある。
発売はスクウェアと合併した、スクウェアエニックス。
スクウェアエニックスでの開発は初となる、ドラクエ作品である。
──今回はフィールドの視点が上空から、キャラの後方視点になり、キャラも8頭身とになり、鳥山明のアニメ柄によるデザインを主張した、リアル寄りな手法に変化。
キャラも街中なども、このような3Dにさせたいと思い続けていた制作者の願いが、ようやく叶った作品でもあった。
──この作品をプレイして感じたことは、マップに遠近感があり、自由度も高く、とにかく広い。
フィールドも街中も、ダンジョンにいたっても、船で移動しても、空を飛行しても、広々とした手抜きのない作りで、丁寧に作られており、プレイヤーが、本当に冒険をしているような疑似体験ができる。
それにより、3D酔いしてしまうこともあるが、細かく視点を変更できるので、問題はない。
──調べるコマンドを入れずに、ワンボタンで宝箱などが開けれて便利になり、場所が広くても走ることにより、時間が短縮できるし、歩かないといけない場所や、歩かないと会えない特定のモンスターもいるが、ゲーム中のロード時間は異様に速く、待ち時間によるストレスはない。
あまりに広すぎて迷ってしまう感もあるが、フィールド中に次の場所などを知らせる仲間との会話コマンドで、行き先を教えてくれたりと、これまでのシリーズと違い、迷うことなく目的地にたどり着ける、親切な設定になっている。
またマップは立っているだけでも時間が経過し、夜限定のイベントや、モンスターが現れたりする。
──戦闘は今までと同じ、横並び一列のコマンド方式。
ウィンドウの順番通りにキャラが並んだような形で、より戦闘を楽しめる。
FFみたいな作りになったが、ターン性なので、こちらが行動を入力しない限り、何も起きない棒立ち状態が続く。
ドラクエのモンスターたちは律儀で、自分のターンが始まるまで、微妙に体を揺らしながら、大人しく待っているのだ。
慌ててコマンドを入力せず、落ち着いてプレイできるのも、ドラクエの魅力である。
キャラの動きも色々で、ウネウネと動く。
戦闘が始まると、鞘に納めていた剣を引き出して構えたり、腰につけていたムチをしならせたり、ブーメランを投げたら、一周して手元に戻ってきたりと、描写が細かい。
──テンション上げという、ためるコマンドで、攻撃力や防御力、技や呪文の能力を上げて、対抗できるようにもなり、三段階目のマックスになると、キャラの体つきが変化する時がある。
迫力のあるオーラが吹き出す姿は、ドラゴンボールのスーパーサイヤ人を
実にドラゴンボールのキャラデザでもある、鳥山明らしいアイデアである。
──必殺技などにもこだわり、実際に試したら、どんな行動になるのかを、徹底的に研究を重ねて製作された。
例えば、ギガストラッシュの場合は、上空にジャンプして画面を後方に退け、モンスターに急接近し、横一面に雷を纏った剣で、敵を高速でなぎ払うという。迫力のある演出に仕上がった。
だが、せいけんづきなどの格闘系は、素手じゃないと使えないし、何もないフィールドから、いきなり岩石落としで、どこでも岩石を落とす技のシーンは場違いすぎた。
これを船の上でもやるからに、どれだけ頑丈な船体なんだと、ツッコミたくなる。
また画面から、引き際の視点になったせいか、一度に出現するモンスターの量が増えた。
これにより、戦闘シーンの時間が大幅に伸びて、昔ながらの弱い敵から倒すという方法が使えず、ドラクエのわりには難しく、戦略を練るような感覚に……。
おどかすというコマンドで、敵を退散させて、経験値と、お金を入手する方法もあるが、それにも関わらず、経験値とお金が極端に少ないため、レベル上げが困難になった。
──これまでの職業や転職システムがなくなり、新たに増えたスキルポイントを振り分けて、仲間のステータスを上げれるが、均等に上げると最終的には中途半端な成り下がりキャラになってしまい、一つに集中して上げた方が、個性の強いキャラになるが、結果的には、これでいいのだろう。
──また、序盤でしか使用価値が無かったお荷物なやくそうが、長らく使えるアイテムになった。
新しいアイテムとして錬金釜があげられ、この釜にやくそうと、特定のアイテムを入れると、上やくそうなどに変化し、ベホイミの回復並みの強力なアイテムに。
もう、ただの草とは言わせない。
──物語も上質で凝っており、素晴らしい展開だが、今回は登場人物の死が多い。
イベントをプレイするにつれて、苦痛に感じることもあるが、ドラクエらしく、そんなに泥沼な展開ではないので、そう気に病むことはない。
──しかし、キャラをリアルにしたのに、一言も喋らない主人公には問題がある。
感情の起伏も少なく、イベントが起きても、すぐには反応せず、一歩間を置いてから、僅かに感情を出す程度。
主人公の生い立ちなども紹介されないので、最後まで謎の主人公のままである……。
タイトルに強調された、肝心のヒロインの姫も、終盤まで馬車を回す馬の姿になっていて、イベントも極端に少なく存在感がない……。
物語構成は秀作なのに、メインキャラが空振りとは話にならない。
いかにもドラクエらしい作りは認めるが……何となく味気無い。
──冒頭も述べたが、このドラクエは経験値が少なくて、レベルが中々上がらず、お金も貯まりにくいため、武器や防具なども中々買えず、結果レベル上げに、大半の時間を使う羽目となる。
その戦闘シーンも長めの演出となっており、サクサクプレイには向かない。
──多少、難はあるが、結論的にはハードがプレステ2になってもドラクエらしさは
膨大なソフトに埋もれたプレステ2で、RPG選びに迷ったら、このゲームを選びなさい感が伝わってくる、そんな王道な作品でもある──。
****
──さて、このドラクエⅧを最期にして、私のゲーム人生もここで本当に終わりである。
このドラクエⅧは、当時はプレステ3本体でプレイした作品でもあり、大いに楽しんだが、プレステ3のソフトは全く購入せずに、後にハードの処分を検討。
その後ゲームはスマホゲームも含めて、一切プレイせずに、手元にはゲームの形すらも消え、再び、音楽がメインの趣味に戻ることになる……。
──学生の頃から楽しんできたゲーマーとしての終わりそうになかったゲーマー人生は、十年という節目を迎えて、ついに終わりを告げた。
今回、特別な意味を籠めて、灰色の不死鳥のように、このエッセイで蘇ったが、ゲームの始まりも終わりも『ドラクエで繋がっている』という点も、実に味わい深い。
ゲームを知らなければ、ゲーソンやアニソンなどの幅広い音楽も知らなかっただろうし、ゲームを通して、色々な経験も学べなかったかも知れない。
よくゲームは、美酒のようなものとも言うが、ハマり過ぎても良くない娯楽でもあり、ほどほどのさじ加減で楽しむ娯楽の一つであろう。
そのような身近なストレスを和らげるような、そんな便利な心の回復アイテムなのかも知れない。
──さあ、最後は『ドラクエⅢ』のタイトルらしく、穏やかに締めようじゃないか。
十年にも通じたゲーマーの魂よ、
そして、永遠の伝説となれ──。
fin……。
十年にも及んだゲーマーの歴史よ、今こそ灰色な不死鳥のように蘇れ! ぴこたんすたー @kakucocoro
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