第4話
少しメッセージを遡ると、私も参加すると送っていた。それに、前田も。
そういえば昔、青村公園でみんなで鬼ごっこをした記憶がある。その時の日なのだろうか、そんなことを考えていると、
「テテテンッ」と急に携帯が鳴った。
誰だろう、とグループチャットを閉じる。一番上に「今日くる?」
前田からだった。
「生きて、るんだ」
声に出すと嘘のように聞こえて、夢なのだろうか、と思った。前田が生きてることがものすごく嬉しかった。たとえ、それが夢でも、過去だとしても。
私は素早く「行く!」と返信をして、携帯を閉じた。眠気なんてもうとっくにどこかへ消え去っていて、私は急いでベットから降りる。とりあえずは、準備をしないと。
クローゼットを開けると、どう考えても趣味の悪い服しかなかった。小学生みたいな、いやまあ、二ヶ月前までは小学生だっただろうけれど。今では考えられないほど意味のわからないセンスのものに囲まれ、悩みに悩んだ末、頑張って見つけ出した一番シンプルな白の大きめのTシャツに、ジーンズ生地のショートパンツになった。
洗面台の前に移動すると、鏡には中学一年生の頃の幼い私が写っていた。いよいよタイムスリップが現実のものに感じられてきて、夢だとは思えないほどリアルな世界に違和感を覚え始めた。でも、私にそんな夢のような話を信じられるわけもなく、とりあえずは夢だと思うほかなかった。
二時が来るのは思っていたより早かった。前田に会えるかもしれないという期待と、夢がいつ覚めるかもわからない不安で、家の中を周回するだけの時間が度々訪れていた。メッセージを遡っても、大した情報はなく、私はどうしたらいいか何も分からないまま、二時を待つしかなかった。
一時五十五分。自転車で大通りを走って私が辿り着いた頃には、もう既に五人くらいは来ていて、みんなに「やっほー」と声をかける。みんなすごく幼くて、微笑ましい。もう今ではあんまり話さなくなった友達とか、高校から別々になった子とかもいて、なんだか懐かしい気持ちになった。
私の通う学校は中高一貫の私立で、大体の人はエスカレーター式だったけれど、途中で辞めたり、中学までの子も少なくなかった。
「緋色ちゃん!」
声のした方を向くと、髪の長い女の子が駆け寄ってきた。
「わあ芽依ちゃん!久しぶり?かも」
たぶん、中学一年生のときはクラスが離れていたはずだ、久しぶりで大丈夫だろうか。
「うん、塾一緒だったよねー!クラス離れたからめちゃ久しぶりな気がする」
「よねよね!」
よかった、と胸を撫で下ろす。クラス関係ない集まりだから、距離感が全く分からない。
「そういえばさ、莉子まだ来てない?」
私は中学一年生のとき確か一番仲良かったはずの子の名前を聞く。
「あー三組の?多分まだだと思う」
「そっかぁ」
次々とみんなが自転車でやってくる中、周りを見渡すが、莉子も前田の姿もない。
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