2022年9月

 酒なりエナドリなりジュースなり、飲み終わった後の缶は無意識に握りつぶしてしまう。別に、握ったところで何が変わるわけでもない。強いて言うならゴミ袋の容量を圧迫せずに済むくらいだろうか。だがなぜかやってしまう。手に収まりやすいくらいの直径をしているのもあるだろう。最後の一滴を呷った後にペキョッと握るまでが缶飲料のマナーですらある。

 それにしてもこの缶、形状が興味深い。特にプルタブは不思議が詰まっている。てこの原理で缶のフタをプシッと開ける装置だが、どこかふざけた顔をしている。プルタブに顔などないという正論は脇に置いて逆さに見てみてほしい、U字の溝と明け口で目が、タブの留め具で鼻が、その下の輪で口ができている。こう見るとビッグマウスなやつである。しかし実際に缶の飲み口を開けるという大仕事をやってのけるから単なるビッグマウスでもないのが憎らしい。それを思うと缶を握りつぶすのもある意味納得である。

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