雨粒
雨粒は世界で最も孤独な旅人だとしばしば思う。霧のようにからだが細っこいのもいれば、豪雨のようによく育ったのもいる。そうして彼らは雲という大屋敷を旅立つのだが、中には風にあおられて旅路の変更を余儀なくされたり、日光を受けて装備を剥がされ、泣く泣く屋敷に戻ったりする者もあろう。なんだかんだで無事に地表に辿り着いた彼らは、顔すら合わせたことのないであろう家族と顔を見交わすのである。その瞬間、彼らは彼らに交わり、彼らは元の彼らでなくなる。日光に温められて再び大屋敷に戻るのは、旅に出たままその地の廃墟に住むようなものだ。そうして機を見て再び旅立つ時には、全く新しい彼らとして踏み出すのだ。
何だか中途半端な詩を書いているような気がして照れくさくなってきたので、窓の外にカーテンを作っている雨粒たちを眺めてみた。雨粒といいつつ、どちらかというと線のような姿で降り注いでいる。旅人になったりカーテンになったり線になったりと変幻自在なものである。
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