ドーナツ

久しぶりにミスタードーナツの商品を食べた。そこそこ好きな部類に入るチョコレートである。外面は比較的綺麗な円形をしているくせして、内部は生地に穴がボコボコと巣食っている。この小さな洞窟には糖分という人間の根源的な友人が沢山住んでいる。それでいて、パッと見たところサックリしていそうな見た目なのに、口にした途端もっさりしている。どちらかというとネッチョリの方が近いかもしれない。しかも、食べているうちに口の中の水分をすっかり持って行きやがるのである。この生地の食感の落差には勝手に少し残念な気分になってしまうのだが、その瞬間は何度立ち会っても慣れないものがある。そういえば、ドーナツの穴を残して食べるとかいう哲学的な問題を耳にしたことがある。私のような凡人には、地震の揺れで崩落する建物よろしく崩れゆく生地を前に、そんなことを気に留める暇などない。ああそういえばこれがドーナツなんだっけな、と思いながら粛々と糖分の塊を摂取するのみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る