第3話 恋文ー鳴神月(六月)

大地が叫び声をあげているような音で

目が覚めた

そして

私は貴方と紫色すみれいろ稲光ひかりの中にいた


濡れた髪から雫が落ちる

貴方が私の頬に触れた


目を覚ませと

なぜか

遠くから貴方の声が聴こえた


私はもう

この場所に貼り付けられ

起き上がることもできないのに


貴方が私の腕を折り

足を砕く

首に蛇が絡みつく


蛇は私の口から体内へとゆっくりゆっくり

入り込む

ただ苦しくて涙が出る。

でも

動くことは出来ない


貴方が私の身体の中の中へと入り込んでくる


それは

とてつもない快感と強張るほどの激痛


身体中の血が沸騰して

指先まで痺れさせる


私を隅々まで見る貴方の目が

愛おしい


蒼い閃光と共に

私の身体を引き裂いて

私の知らない私の中を

知り尽くして欲しい


もっと

もっと

私の中に潜り込んで

私の秘密も全てを飲み込んで



この快感と激痛を

何度も繰り返す


濡れた髪は

貴方の冷たい皮膚に纏わりついて

離すことは赦されない



目を覚ませと

雷鳴こえがする


大丈夫…


私は目覚めている


貴方しかいないこの世界で。


                來宮 理恵

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