第8話 転校生エンマ・ヴェンナコスキ
「あのなぁ、駄目だろぉ? 講師の人のメンツ潰しちゃ」
「はい……」
「フィリップ先生は嘆いてたぞ。自信無くしたって」
「すいません……」
授業終わり。昼時の鐘が鳴り、生徒が続々と食堂に向かう最中、教室ではアリアがティム先生に呼び止められていた。難しい顔をして説教をする担任に、珍しく落ち込む生徒。このような光景はある意味で4ーDでは珍しくなく、ある意味では珍しかった。
「勉強熱心なのはわかるが、もう少し自重してくれ。こっちとしては講師の方をお招きしてる形なんだから、拗ねられて慰めるのは俺なんだぞ」
「はい……」
「なんで三十四にもなる大の大人を俺が慰めにゃならんのだ」
「すいません……」
アリアが授業終わりに呼び出されるというのは、このクラスでは珍しくない。よくアリアはその成績から生徒の前での実演を任されるのだが、少々やりすぎたりして生徒や教師を萎縮させる傾向にある。それがわかっているのなら当てなければいい話なのだが、学園も一枚岩ではなく、特に研究者気質の多い理論派の教師は逆にアリアを積極的に使ったり、そうでなくともアリア以外に当てられる者が限られたりと、諸所の理由で結局授業ではアリア頼りになる事が多かった。
今回みたいに教師がアリアという人物のことを知らなければ、良くも悪くも彼は目立つ。側から見れば単なる成績優秀な勉強意欲のある生徒というふうに見られるため、授業という短い時間内に四十名ほどいる生徒の中から見事注目を買い、教師が哀れにも指名してしまうという事態が後を絶たない。毎年八月の入学式の段階になると、そのような可哀想な教師が学年に二、三名出ることになるのだが、それが特別講師にさえも及ぶとは流石のティムも考えが及ばなかった。事前に言っておかなかった自分も悪いが、そこら辺は察してくれよという半ば自分も嘆きに似た説教。己の浅慮に頭をもたげたくなるティムであった。
「とにかく、次からはあんまり派手にやりすぎないように。これ以上教鞭を取る気を削がれてはかなわんからな」
「はい、すいません……」
かくいうアリアも、普段からこういう呼び出しは慣れており、彼からしてみればその何割かはイチャモンのようなものだから、溢れる知的好奇心と勉強意欲の名の下、理論武装によってそのことごとくを受け流してきたのだが……さしもの彼も今回はおとなしく反省することにした。授業をダメにしたという、一番自分がされて嫌な行為を自分がしてしまっていたのだ。面子や面目がわからぬ年でもない。
少々落ち込んだ様子で教室を出ると、廊下ではレティシアが待っていた。食堂に再び向かう彼のもとに半歩遅れて駆け寄る。
「終わった?」
「……ああ」
「じゃ、行こっか」
「もしかして、待ってたのか」
「そうだよ?」
「先に行けばよかっただろ……友達と行ってくれば」
「うん、だから待ってたの」
「……」
「ほら、行こ?」
彼女の言葉の意図を汲み取って、アリアは徐に窓の方を見た。何があるわけでもない。ただ顔を背けて、感情を落ち着かせたかったのだ。
時折、こんなふうに彼女の切り返しにドキッとさせられる。機転の良さにはいくばくか目を見張るものがあるな、などとよくわからない分析で自分を落ち着けようとしていた。
「それにしても、アリア君。さっきは凄かったね」
「あぁ……」
「こう……ババババーッて。凄すぎて講師の人も唖然としてたもん」
「そうだな……」
「ほんと、凄いよね。アリアくんって何者? 超人?」
「……」
彼からしてみれば答えづらい。それは自分の失態の証であって、誇るものでも何でもなく、力は制御してこそだ。実力あるものは、自身の能力が周囲に与える影響を理解しなければならない。それをせずして無作為に振るうというのは、本質的に力なき愚者とやっていることは何も変わりないのだから。
まるで武勇伝のように自分の失態を語られては肯定すればいいのか否定すればいいのか見当がつかない。
「けど、それだったらレティシアだって凄いだろ」
「え?」
「入学してすぐにクラス全員の名前を覚えたりとか……」
「……それって、普通じゃない?」
「普通じゃないだろ」
そりゃあ、教師ともなれば死に物狂いで覚えようとする熱心なやつもいくらかいるが、ここまで簡単に言えて行動に移しにくいこともあったもんじゃない。人間は案外興味のない他人のことは覚えていないのだ。
「中にはまだ話したこともない奴だっているだろう?」
「ん、まあ……」
「俺なんか、三年かかってようやく周囲の顔と名前が一致してきた」
「それは遅すぎるよ」
「多すぎるんだよ、この学園は。多すぎていちいち覚えてられない」
「それは酷すぎるんじゃないかな……ん、ねえ、アリア君、あれ……」
「……ああ、あのヒトは──」
「人を指さしてはならないと、そうママに教わらなかったのか」
神経質そうな声が廊下に響く。喋るんだと言わんばかりの周囲の目線が突き刺さって、それはひどく不愉快そうな顔を浮かべた。じろりとあたりを睨みつける。途端に衆目は逃げるようにして食堂へと向かった。押しても手応えのない暖簾のように、湯煙の如く消えていってしまう。空気というのはかくも度し難いものだ。
「まったく、この学園の人間はなんでこうも失礼なやつばかりなんだ。マナーというのを知らないのかね!」
レティシアの目の前にいたのは青鼠色をした毛むくじゃらであった。大きな耳、後ろから生えた尻尾、背丈は子供ぐらいで小さな瞳をキョロキョロと動かしている。獣のような容貌に反して人語を介すそれは、プンスカという擬音が似合うような様子で怒っていた。
「そういう貴方は寛容さを穴蔵に置いてきたようですね」
「ヒトをネズミ扱いするな!」
「他人は自分の鏡ともいいますよ」
「ふん! 相変わらず、減らず口が治らないようだね、アリアくん!」
「えっと、アリア君、この人は……」
戸惑うレティシアにアリアが紹介する。目の前には人語を介する獣……のような二足歩行する何かが立っていた。
「ああ、紹介が遅れたね。こちらはカスペルさん。プーミリオのカスペルさんだよ。亜人学専門で、一応はこの学園の教師をやっている」
「あ、えっと……」
「プーミリオは亜人の一種だね」
「一人と言ってくれ」
「それじゃプーミリオが種族名なのかわからないじゃないですか」
「ふん! 屁理屈ばかり、ノワールはいつもそうだ……」
嫌味のように呟く。
「あの……私、レティシア・オルブライトと言います」
「プーミリオのカスペルだよ」
名乗られたら、たとえ知人が自己紹介をしてくれていても名乗り返す。その獣らしきそれは、礼儀には忠実なようであった。
「あの、亜人の方を見るのは初めてで……」
「亜人なら君、そこら中にいるではないか」
「え?」
「君の周りにたくさんいる、ノワールの群れが」
皮肉げに周囲に向かってわざと聞こえる声で言う。これには話を素通りしながら聞いていた周囲の生徒達も少々怪訝な顔をしたが、ピリついた空気もこれまた川のように食堂に流れる人の波に消えていってしまう。
「えっと……」
「気にしないで、この人はこういう人なんだ」
「こういう人とは何だ」
「皮肉屋でプライドしいな人」
「私はそんなものになった覚えはない!」
「実際そうじゃないですか」
「この学園の人間がせせこましいからだ!」
噛みついては噛みつき返す。普段、好奇の衆目に晒されやすい二人は一様に噛みついてくる人間をあしらい返す術に長けていた。二人が論戦を始めればそれはそれは長い時間をかけた挙句終わりはしないだろう。側から見れば小君のいい冗句である。
「それで、あの、亜人学って……」
「その名の通りさ。我々は亜人について学ぶ学徒、より広いアジンという視野を持って人類を見つめ直し、そのルーツに迫る学問さ」
第一人者としてカスペルは自身の研究内容を話す。
「難しそうな学問ですね……」
「今の説明を聞いてそのような感想しか出てこないあたり、君には難しい学問かもね」
「えっと……」
「気にしないで。こういう人だから」
「こういう人とは──!」
「えっと、あの、プーミリオっていうのは……」
「数ある亜人の種族のうちの一つさ。総じて鼠色の毛並みを持ち、ノワールの子供と同じぐらいの背丈と大きな耳が特徴で、筋肉のつきやすい体から鉱山での労働が得意だったとされてるよ」
「我々としては非常に不本意なことだけどね!」
「鼠人などとも呼ばれていて、見ての通りプライドが高くて皮肉しいな人が多い。集団の組織と結束というのはノワールの分化だから、プーミリオ達が第一産業の存在を前提とした第二次産業である鉱山発掘業に従事するようになったのはノワールが世界で覇権を得た後、種族としてノワールの文化に従属するようになってからのことだ。あの頃はノワール達が他の亜人に対して従属か対立の二択を迫ってたから、僕たちを嫌ってる人も多いよ」
「ちょっと個体数が多いからって調子に乗るからいけないんだ。地下は僕らの領域なのに、粗暴にあっちこっち掘り立てるから。その上亜人などという呼称まで……まったく、まるで自分たちが真なる人間だとでも言わんばかりだ」
嫌味の次はお小言。カスペルの語彙は尽きることを知らない。ノワールが卑しさ・罪悪となれば、プーミリオはせせこましさと不寛容さであろうか。
「あれ? 穴掘りが嫌いなんだよね?」
「ノワールに従属して労働する一環としての発掘業が嫌なだけで、彼ら自体は地下が好きなんだよ。今ではそういうのが曖昧になって、地下は好きなんだけど穴掘りは嫌いなんていう面倒な人が多いんだけどね」
「へえ、なんか、大変だね」
「そこ! 単純な言葉でまとめない!」
しかし、ずんぐりむっくりとした毛むくじゃらは、その青鼠色の毛並みを揺らして、思い出したように鞄の方に手を伸ばすと、アリアの方に一通の手紙を差し出す。彼の小さい手とあいまって、彼が持ったその手紙は特段大きく見えた。
「これは……」
「僕が何の用もなしにこんなところに来ると思うのかい? これを君に届けに来たんだよ。でなきゃ、こんなノワールの群れになんか近寄らないよ」
心底不機嫌そうに呟くカスペル。神経質そうな目とあわせて、確かに一刻も早く帰りたそうな雰囲気を醸し出していた。
アリアはそれを受け取ると、封を切って中の手紙の内容に目を落とす。
「……」
「あの、すいません」
「なんだ?」
「亜人学の方ですよね。ちょっと、お聞きしたいことがあって……」
「なんだ、言ってみろ」
ここまで周囲のものをこき下ろしている彼だが、亜人学を研究する学徒として、自分の研究分野に興味を持たれて舞い上がらないわけがないのだ。多少の嬉々を隠しながらいくぶん前のめりに聞く態勢を作る。
「あの、ノワールって……何でしたっけ?」
「……」
「……」
「あ、えっと……」
「アリア、君、こんな無教養な生徒を──」
「言わないでやってくれ」
「え」
「いや、言うぞ。アリア、君、こんな無教養で浅学な生徒を連れて歩いてるのかね。知人として、恥ずかしいとはこれっぽっちも思わないのか?」
「わっ、忘れて! 受験も終わったから油断して!」
「一体、君、どうやってこの学園に入ったのかね。愚かな者はこの学園で散々見たがね、ここまで白痴な者は初めてだよ。私は驚きだ」
「ごめんなさいぃ……」
散々な言われようにレティシアは落ち込み萎縮する。隣にいるアリアの方は、手紙に目を落としながら二人の会話を聞いて苦笑いをこぼしていた。無知ながら意欲があって伸び代がある、それを知っていたから一緒になって笑う気は起きなかった。
「レティシア、この世界に多くの人種が存在することは前に話したよな」
「えっと、神様がいろんな人間を作ったんだっけ」
「一つの宗教的解釈としてはそうだな。そして、それらを科学的には総じてアジンと呼ぶ。俺らはその一つ、ノワールという種族で、かつては矮小・貧弱、卑しさだけが取り柄だなどと散々な言われようだったが、個体数だけは多かったがために不利な勢力争いの中でやがて集団を形成するようになった。彼らは次第に組織と結束という集団的能力を養い、数の武力という概念をもたらした。それまでの単位武力による個々の戦いではなく、集団全てによる総力戦によって世界の覇権を握っていき、技術とアートを発展させ、最終的にアジンの中で最も個体数が多く反映した種族へと成り上がったわけだ」
「ふん!」
「そして、彼らはやがて亜人という、自分達ノワールと他のアジン達を区別する言葉を生み出した。組織として仲間意識をことさら持つノワール達は、世界の中心は自分たちにあるとしたんだ。そして、他の種族に対して従属か対立かの二択を迫った。隷属でないのがせめてもの救いだが、それまでの単位武力による戦いに固執した他の種族達は、その高い自尊心もあいまってノワールの在り方を認めず、多くは対立を選びやがてノワールとの勢力争いによって数を減らしていった。今では亜人と呼ばれるようなかつてこの地に栄えたアジンたちの多くは絶滅か衰退を強いられている。特に繁殖能力に優れた俺たちを他の種族は恐怖し嫌悪して、ノワールの文化とそれに関する一切を嫌ったがために、更に人口減少に拍車がかかった。俺たちもまた自分たちの社会において亜人達を差別するようになって、特にノワールのコミュニティで疫病が流行った時なんかは亜人たちにその罪が着せられて迫害の毛色が強くなり、今に共通する種族間の溝につながっていったわけだ」
「へ〜、なんか、アリアくん先生みたいだね」
「君がさせてるんだろう? あまつさえ、高校受験の内容を」
「う、ごめん……」
「いいよ、これぐらい」
「……それじゃあ、僕はこれで失礼するよ。確かに届けたからね」
念を押すようにそれだけ言って、カスペルはまるでその低い背丈から生徒たちに認識されず、居るのを忘れられて踏まれるのを避けるように、わざとずんずん足音を立てながら廊下をさっていった。彼の去っていく背中を見送れば「うおっ」という生徒の叫び声が彼の行く方向から聞こえてくる。このティルティア学園では日常茶飯事の後継であった。
「……それじゃ、行こうか」
「カスペル先生って先生だよね?」
「そうだが……突然どうした」
「いや、なんで手紙を届けに来たんだろうなって」
「ああ、たまに机だかなんだかに置かれてるらしい。どうしてそんなことになったかはわからないが、生徒の間じゃ秘密の郵便局扱いされてるんだとか」
「え、それってすごく大変じゃない!?」
「ああ、本人もすごく愚痴ってたぞ。それでも出された手紙をちゃんと届けるもんだから、噂が本当になってもう引くに引けなくなったようだ」
「律儀なヒトなんだね……」
「本当にな……」
「そういえば、手紙は誰からのだったの?」
「……知らない」
「え? 送り主は書いてるんでしょ?」
「ああ」
もう一度、その手紙の送り主の名前に目を通すと、
「やっぱり、覚えてないな」
こともなげにそういった。
◇◇
「アリア・ドルミエス・アルトレア!」
アリアのフルネームが4ーDのクラスで叫ばれる。この名前を聞くことは、この教室では多い。またアリアが何かやらかしたと、教室の生徒達は一様にその叫び主の方を見て、次いでその半分がすぐさまアリアの方を見つめた。
「……」
「アリア・ドルミエス・アルトレア!」
「聞こえてる」
「どうして演習場に来なかったの!」
「何のことだ?」
「惚けないで! 手紙を渡したはずよ!」
づかづかとその女性とは教室の中に入ってきて、アリアの耳元で叫び散らす。これにはアリアも少々顔を顰め……はしなかった。どうやら、音波操作で音量を調節しているようである。しかし、それを単純な遮蔽魔術だと受け取った彼女は、怒りのままにその魔術を破壊した。この学園において魔術の講師は認められているが、他生徒への危害は如何なる理由があろうと認められていない。アリアの魔術を破壊したことはれっきとした彼への加害行為である。
「聞きなさい!」
「聞いてるよ」
「聞いてないでしょ⁉︎」
「いちいち噛み付くなよ、軽減魔術だ」
「そんな面倒なの、あの一瞬でできるわけないでしょ⁉︎」
「……」
このやりとりにそりゃそうだと彼女の方を信じるもの半分、アリアならやると、彼の所業を日々目の当たりにしている一応のクラスメイトとして、したり顔で彼女の世間知らずさを笑うもの三割、他は慌てる者であった。隣にいるレティシアもその一人である。
「あわわわわっ!」
「手紙、渡したわよね!」
「確認するのか怒るのかハッキリしろ。あれ、君だったのか」
「ほら! 渡してるじゃない! どうして来なかったの⁉︎」
「だって、誰だか分からなかったから」
「私の名前を書いてたはずよ!」
「ああ、書いてたな」
「ならどうして来なかったの⁉︎」
「誰だか分からなかったらだ」
「ブフッ……!」
「ちょっと、貴方……!」
「だって……」
思わずフリーダは吹き出してしまう。それはつまり、彼女にとって憎きアリアには、彼女という存在は毛ほども相手にされなかったということだ。これには傍観者に勤めようとしていたフリーダも笑ってしまう。
きっと笑われた彼女はフリーダを睨み返した。すぐさまフリーダは顔を背けて、なおも背中を揺らしている。こちらに目を合わせない彼女を見て、本人は仕方なさそうに、それでいて怒気を隠せない様子で皮肉を垂れた。
「このクラスの人間はみんなこうなんですの? 礼節の一つもなっちゃいないこと」
ここにいる全員、あの二人だけには一緒にされたくないと思った。
「それじゃあ、これからついてきてくださいますわよね?」
「え? どうしてだ?」
「ブフッ!」
「どうしてって、貴方が約束をすっぽかしたからでしょう⁉︎」
「そんな約束、した覚えないんだが!」
「この──!」
「ブフゥ!」
「貴方!」
咄嗟にアンジェリーヌが再び吹き出したフリーダの肩を叩いて、ついでに顰蹙を買わないうちに教室から連れ出す。猫にでもするかのように首根っこを掴まれて摘み出されたフリーダを見て、彼女もまた目の前の当人に集中することができた。
「とにかく! さっさとついてきてくださいまし!」
「行ったほうがいいよ、アリアくん……」
「……レティシアがそういうなら」
レティシアはことの真相を最初から知っていて慌てに慌てていた。何がどうしてどうなって、こんな事態に陥ってしまっているのか知っていたから、彼女の手紙が無視される現場を目撃していただけに、レティシアも何らかの罪悪感を抱いていたのだ。
「ふん! 女の子に言われたらはいはいと鼻の下伸ばして従って、全くみっともないったらありゃしませんわ!」
「……」
確かにな、とアリアは思った。
「じゃあ、行かなくていいか?」
「言い訳ないでしょ!」
「ほら〜、そろそろ席につけ〜」
5時限目の時間となりティム先生が声を上げる。いつの間にか昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っていた。
「ほら、出て行ったらどうだ?」
「むきー! 絶対に許しませんわ! 放課後、放課後にまた会いましょう! 演習場に、必ず! 来なさいよ!」
「ほら、エンマ・ヴェンナコスキ。教室に戻りなさい」
「絶対、絶対ですからね!」
「……」
「絶対来なさいよー!」
「……」
先生につまみ出されながら、最後まで叫びをあげるエンマ・ヴェンナコスキ。瑠璃色の瞳と金髪ツインテールが特徴的な女生徒であった。
「……」
面倒なことになったなと思うアリアであった。
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