第22話 恐怖の百足軍団
また一段と階段を降り、さらに深くへと降りていく。
僕は長島ダンジョン7階層へと侵入した。
「長島ダンジョン7階層。出てくるモンスターは6階層と変わらず、6階層のモンスター達が種族関係なく構成された群れで襲ってくる。その量はゴブリンの群れと比較すると多く、時には二十の群れが出て来ることもある、かぁ…」
6階層まではモンスターの搦め手を完封できていたから、搦め手に極振りしていたモンスター達を圧倒できていたが、これが集団になると話が違ってくる。
「如何するべきか…。幸い構造は石造りの通路の通路のままだし、この狭い通路を利用してなるべく一対一に持ち込むようにすれば何とか対処できるかな?」
この階層で最も避けるべき事態は、敵に囲まれる事である。此処のモンスターは、毒液、溶解液、超音波と厄介な搦め手を持っている。
されど搦め手はあくまで搦め手。初見殺しなので知っていれば対処は容易である。
ならば、搦め手が初見の相手と戦う時を除いて、最も有効な状況は何時だろうか?
そう、それは多対一である。多対一は一対一の時よりも1人一人に余裕ができる。すると、大きな攻撃に出ることが容易になる。無論、攻撃された側は致命的な一手を防ぐために大きな攻撃に集中せざるを得ない。
必然、搦め手に割くリソースは少なくなる。するとこの搦め手というものが深くに刺さりこみ決定的な一打ともなるのだ。
(囲まれてしまうと360度全方位に気を配らなければいけない。全ての攻撃を防ぐことができたとして、反撃ができなければジリ貧だ)
少しの気配も取りこぼしの無いよう、僕は今まで以上に気を張って慎重に進んでいく。
すると、前方から4つの反応がこちらへと近づいてくる。
(さて、何が出て来るか?)
僕が腰の剣に手を掛けいつでも抜刀できる準備をすると、通路の奥からカタカタカタと石畳を小気味よく打ち鳴らす音が聞こえてくる。
小気味よい音と共に現れたのは通路を塞ぐ大きな胴体、その先に付くはチャームポイントの赤い頭(ごっつい牙が付いてるよ!)。
「ムカデぇ…」
装備を溶かす溶解液を放つこのダンジョン屈指の嫌われ者がこちらに鎌首をもたげる。
しかも、先頭の一体の後ろからはさらに別の百足の足音が約3体分ぐらい聞こえてくる。
「ま、でもっ!幸運だったかなっ!」
僕はムカデの攻撃を防ぎながら、案外これで良かったかもと考える。確かに、ムカデは装備を溶かしてくるという害悪極まりない(財布に)性質を持っている。
けれどもこの状況においてはとても歓迎すべき相手だった。
さっき囲まれるのはヤバいから…と考えていたがこの大百足、大きすぎて後続が戦闘に参加できていないのである。
「これ、一対一の理想的な状況じゃん。勝ったなこれは!」
先頭の一体が僕を攻撃してくるが、集団でもないので当然その攻撃は簡単に避けられる。それどころか、相手を防戦一方にできていた。けれども、後続の仲間たちは通路を通れずその場でタップダンスを踊るのみ。
「うりゃぁぁぁーーーーーー」
押し込まれてしまい、頭を下げている百足の頭に思いっきり剣を振り下ろす。
が、その剣を振り下ろす前に僕は胴体に固いものに衝突し弾かれる。
「んなっ?どうやって攻撃したんだ?」
僕が剣を叩きつけようとしたムカデは反撃できるような態勢ではなかった。だからこそ僕は仕留めようと、剣を叩きつけようとしたのだ。
不可解な一撃、どうやったのか確認するために僕は百足に素早く向き直る。
そして僕の視界にオゾマシイモノが映り込む。
それは、百足であった。いや、百足達と言うべきだろう。
僕は百足が通路を塞いで後続は戦闘に関われないだろうと思っていた。
後続の百足は、壁を歩き、天井を歩き、先頭の百足の上の空間から無理矢理出てきて攻撃してきた。
僕の目の前には百足が3匹、ぎっちぎっちに詰まっている通路があった。
3匹の百足がそれぞれ床、右壁、左壁を伝ってこちらに迫ってくる。各々の甲殻が擦れあい、キィキィと不快な音を立てる。
「……………………………………………………キモ」
あまりの気持ち悪さに茫然としてしまった後、僕はこれを見ていると精神に異常をきたすと感じ、全力で百足の首を落としにかかる。
百足達は通路に詰まっているため、ろくに回避も出来ず首を切り落とされる。
フューズセンチピードの魔石は頭に付いているため、残った胴体は塵となって消えていく。
その塵の向こうに残った一匹がこちらを見て固まっている。
「死ねえええええええええええええ」
僕はただただ気持ち悪い光景を見せられた怒りを、最後に残った百足にすべて叩き込む。
百足は「えっおれぇ?」と言いたげな表情(?)で消えていく。
「これで悪は滅びた…」
僕は謎の疲労感に包まれた。
―――――――――
「逃げないと…」
石造りの迷路の中、少女が一人息を切らし逃げ惑う。少女は追手から身を隠し、休憩をとるが追手であるモンスターは人ならざる感知能力で彼女の居場所を暴き、追い立てる。
少女にとっては幸いに、モンスターの足は遅く、撒く事は不可能ではない。けれど、何度撒いても見つかってしまう。
さらに、逃げるために通路を彷徨う内に彼女は階段までの道を見失っている。このままでは、捕まってしまうのも時間の問題である。
「誰か…助けて…」
少女は、石造りの通路の一角で天を仰ぐ。
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