第2話
2020年 4月1日。
春の日差しが暖かく私を照らし、桜の花びらが視界を覆います。
期待と、不安と、焦りと。
沢山の思いをカバンにつめて、始業式に。
「すみれ、クラス一緒だといいね〜」
「多分一緒でしょ。だって選択科目一緒なんだよ?」
「確かに。あんだけ被ってて離す方が難しいよね」
「言えてる。」
今、私たちは高校3年生。
1.2年と離れず一緒にいて、選択科目の影響で、恐らく今年も一緒のはずだ。
問題は、他の人。
私の高校は、地元の人間が多い学校で、小、中と関わった中で、苦手な人も得意ない人もいたし、もう一度、関わりたい人間もいた。
「他の人もね、いい人たちだといいよね〜」
「確かに、けどそういうこと言うとフラグみたいになるからやめて!」
「別に誰でもいいよ、すみれがいるなら」
「え、じゃあ寿司奢ってくれるってこと?」
「意味わかんない殴るよ」
「山下とかさ、一緒だったらどうする?」
「選択科目的に、有り得はするよね。山下も文系だしさ。けど、違うと思うよ。」
「なんで?」
「うーん」
私が少し、一緒のクラスが良いなと期待しているから、かな。物欲センサー的に。
……なんて、口が裂けても言えないけど。
「煮え切らない返事!私は絶対あの人と一緒はやだけどね!」
「私も嫌だよ〜」
山下は、私の昔の好きな人。
すごい変なやつだし、お調子者だし、からかってくるし、けど話してると楽しくて、自分といる時だけ落ち着いた冷たい表情を見せるところが、小学生ながらに、凄く好きだった。
当時は珍しく、私も彼も親が離婚していて、同じような境遇を共有していたからこその、絶妙な距離感だったんだと思う。
累計6年くらいは好きだった。
けどそのうち何年かは執着みたいなもので、後半に至っては一方的にからかわれるだけで、度が過ぎたものも多かったし、お世辞にも仲が良かったと言えるものじゃなかった。
けど、また同じクラスになったら。
単純な私は、また彼を好きになってしまうかもしれない。報われない恋愛は、したくない。
また話したい気持ちは、正直ある。
けど、そんな少しだけの期待は、きっと私たちを引き裂くには十分なものだろう。
「本当はちょっと、一緒がいいくせに」
「うるさい。」
「図星?」
「まあまあ。」
けれど、もう振り回されたくないのは、本当。
恋も、愛も、激情も要らない。
ただ、今のように、すみれと過ごすぼんやりとした平穏が永久に続いて欲しい。
また今年も同じように誰をも愛さず、安定した1年を過ごせたら。
友達と過ごす日々が、今は充分楽しいのだから。その当たり前にある、当たり前じゃない幸せを、噛み締めて生きていきたいと思う。
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