第41話 カンペキなポロリ対策
で、それからは四人でワイワイとプールタイム。ボール遊びをしたり、流れるプールに身を任せてみたり、メイとはクロール勝負なんかもした。
そしてウォータースライダーでは二人乗りのカップルボートというものがあり、グッパーで組を分けた結果は俺とメイ、桜森さんと善知鳥さんとに別れた。いやこの結果でマジ助かったぞ。桜森さんか善知鳥さんとだったらさすがに緊張したからな。
「それでは先に参りますね。善知鳥さん、いいですか?」
「う、うん! い、いってきます!」
「それでは出発しまーす。3、2、1……」
乗り込んだ二人のボートを係員さんが合図と共に押し出し、二人は勢いよく滑り落ちていった。すぐに「キャ~~~~~!」と二人の声が響き渡り、スライダーのチューブを通ってこっちにまでよく聞こえてくる。おお、室内ながら本格的なスライダーは見てるだけでもなかなか迫力あるな……!
「お次の方どうぞー」の声で、俺とメイもボートへ。
メイがこちらを見ながら言う。
「ねっ、おにーさん前と後ろどっちがい?」
「どっちでもいいぞ。メイはどっちがいいんだ?」
「んー、じゃあたしが前にしよっかな? ほら、あたし後ろだとおにーさん背中にくっつかれてドキドキしちゃうでしょ? あ、それともその方がいい? うわーおにーさんのえっち~♪」
「いや何も言ってないだろ! てかそんなことねぇって! メイが前でいいから。ほら乗るぞ! 後ろ待たせちゃうだろ!」
「ハーイ。じゃ次乗るときは逆にしよっか!」
「2回目もあんの!?」
などというやりとりをしながらメイが先にボートに乗り込み、俺も後ろへ。ただそれほど大きなボートでもないし、カップル向けということもあってかどうしても密着する形になってしまい、メイの白い肌の感触にちょっとドギマギしてしまう。やっぱこの水着後ろから見ると露出すごいな……!
「ほら行くよおにーさん! 落ちないようしっかり掴まっててよ~!」
「お、おう!」
「それでは出発しまーす。3、2、1……」
係員さんの合図で、俺とメイのボートもスタート! チューブ型のスライダー内部はすぐに加速して勢いを増していく!
「キャーーー! ヤバコレけっこーすごいんだけどーーー!? おにーさんちゃんといるー!?」
「いるいる! これ思った以上にスゲーぞ! うおおおお落ちるううううう!?」
「アハハハハハ! マジヤバー! うっわぁ回ってんだけど~~~~~!?」
ボートは途中でグルグル回転を始め、前も後ろも関係ない状態になってしまいマジで振り落とされそうになる!
なんとか必死で耐えていた俺だが、体重の軽いメイはさらに大変だったようで──
「ちょおっ!? ヤバヤバヤバもームリかもムリかもッ! んぎゃーおにーさん落ちるぅぅぅーーー!!」
「こっち掴まれこっち! ほらこっち!」
ボードから振り下ろされそうになっていたメイの手を掴んで抱き留めるように引っ張る。その際、自然と向き合う形で密着してしまい──
「あ……」
とつぶやくメイ。
すぐ目の前に、今にも触れてしまいそうな距離に、メイの顔があった。
一瞬ドキッとしかけたものの──
「……おっわぁ落ちる落ちる落ちる! メイ掴まってろよちゃんと!」
「ギャーもうムリマジムリ! 手ぇ力はいんないってぇ!」
「これこういう滑り方であってんのかあぁぁぁぁ!?」
それどころではないと思い出して二人で必死にボードに掴まる!
こうして二人なんとか必死に耐えながら出口まで到着。ザバーンと着水したボートはその勢いでひっくり返り、派手な水しぶきを上げながら俺たちを水中へ落とした。どうやらそういう着水になるよう設計されてるらしい。
「──ぷはぁっ! メイ大丈夫かっ!?」
「……アハハハハッ! はーもうヤバ-! 最後までヤバすぎなんだけど! はーめっちゃ楽しかったねー!」
「いや舐めてたな! これは大人でも楽しいわ!」
思わず童心に還る俺。二人で水から顔を出しながら笑い合い、先に上がっていた桜森さんと善知鳥さんが手を振るプールサイドへ向かう。
そのとき、桜森さんと善知鳥さんがちょっと慌てた顔をした。
「あ──朝比奈さんっ!」「メ、メイちゃんだめ~っ!」
「ん?」と不思議そうな顔をするメイ。
俺はメイの方を見てすぐに二人の意図に気付き、近くに浮かんでいたそれを手に取り、プールから上がりかけていたメイの手を強く引いた。
「メイ! 待てっ!」
「わっ!?」
そのまま前から抱きしめる形で、メイをプールサイドへと壁ドンしてしまう俺。桜森さん善知鳥さんと一緒に周囲を慌てて確認したが、こちらに注目している人はいない。桜森さんと善知鳥さんもこくこくとうなずいてくれていた。
「ふぅ、ギリセーフか……!!」
「え、えっ? ちょっ、お、おにーさん? な、なななにっ!?」
「あ、悪いメイ! その、お前の水着がだな、たぶんその、ウォータースライダーのせいで……!」
「へ?」
メイは俺の腕の中で二回ほど目をパチパチさせたあと、己の身体を見下ろして確認。
そして──すぐにその顔がかぁ~っと赤くなっていく。
どうやらようやく“緊急事態”に気付いたようだった。
「ほらこれっ! このまま俺が壁になっとくから!」
周りの目を気にしながら小声でそう言って、手に掴んでいたそれを──メイの水着のトップスを渡す。
「あ、ありがとっおにーさん」
「お、おう。一人で出来るか?」
「う、うんへーきっ」
俺の腕の中でいそいそと水着を着用するメイ。その間、桜森さんと善知鳥さんはプールサイドに腰掛けてあえて何でもない世間話をしてくれていた。二人が慌てふためいていては、周囲の注目を集めてしまうという判断だろう。ナイスだ二人とも!
「お、おけ! できた!」
「よし! じゃ先に上がれよ」
「うんっ」
俺という名のカーテンをくぐり抜けて、桜森さんと善知鳥さんに手を掴んでもらいながらプールを上がるメイ。
……あれ? もしかしてメイの水着が外れたのって、滑ってるときに俺と抱き合ったせいなんじゃ……? いやいや違う! 全部ウォータースライダーのせいだ! うん、そうだよな俺は悪くないよな!
とか自己擁護しつつ俺もプールを上がると、メイが胸元を軽く手で隠しながらジト目でつぶやいてきた。
「……二度目?」
「な、なんのことだ? よしメイ! カフェで休憩するか! な! 桜森さん善知鳥さん!」
「そ、そうですね。朝比奈さん、まいりましょう」
「メ、メイちゃんいこっ! おいしいカフェオレがあるんだって!」
というわけで強引に話をそらし、メイをカフェへと連れていく俺たち。
桜森さんと善知鳥さんが俺たちの前を歩く中、メイが突然抱きつくように俺の腕にからんできた。
そしてひそひそと話をしてくる。
「二・度・目。見た?」
「み、見てない」
「ホント?」
「ホ、ホントだって! マジだよ!」
「ふ~ん……?」
これは本当なんだ! プールを上がろうとしていたメイの後ろ姿と水に浮かんでいた水着で危機を察しただけで、決して前は見ていない!
俺が心の中で必死に言い訳していると、メイは突然「ぷっ」と噴き出すように小さく笑った。
「その慌てっぷりだとホントに見てないみたいだね~? ま、わかってたケド!」
「……は? ど、どういうことだよ?」
「ほら、前に更衣室でめちゃハズい思いしたっしょ? だから今日はこんなこともあろうかと~? ほら、ちゃ〜んと準備してきたから♪」
と言って、水着の胸の部分を軽く引っ張りながらその“中”をチラッと見せてこようとするメイ。
「ちょっ!? な、何してんだよメイ!」
大事な部分が見えてしまう前に慌てて視線を逸らすと、メイは水着を戻してくすくすと笑った。
「だいじょぶだって。ちゃんとニップレスしてるからさ」
「……へ? に、にっぷれす?」
「うん。てか知ってる? 胸の先が透けたりしないように隠したり、摩擦から守ってくれるちっこいヌーブラみたいなヤツね。ウォータースライダー乗るの事前に分かってたしさ、特にビキニなんてこういうトラブルよくあんの。だから大事なトコはちゃんと隠してあるしヘーキだよ」
「あ、ああ……そういうことか! そっか、じゃあやっぱ誰にも見られてないか。はーよかった……ってそれはそれで見られたらダメだろ……!?」
ホッとしてからいやそれもあかんやんと焦る俺を見て、メイはなんだかちょっと驚いたような顔をしてから笑い出した。
そしてまた、俺の腕にギュッと強く抱きついてくる。
「さっき見えないように守ってくれたときさ、けっこーカッコよかったよ? ありがとねっ」
「あ、ああ。せっかくの夏休みに黒歴史増やさせるわけにもいかんしな」
「アハハ! ほらみんな早くカフェいこ~っ! めっちゃお腹空いたし爆食いすっぞ-!」
「まぁまぁ朝比奈さんたら。プールで走ったら危ないですよ」
「わわっ、メ、メイちゃん待って~!」
突然カフェへと走り出したメイと、追いかける二人。
さっき腕に抱きついてきたときもメイの耳はずっと赤くなっていたがそのことにはあえて触れず、俺もやれやれと続いた。
その後のカフェで食べた自慢のカフェオレとサンドイッチ、それと近くのホテルで作ってもらっているというケーキがむっちゃ美味くて、俺たち四人ともテンションが爆上がりし楽しい時間を過ごすことが出来たのだった。
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