第34話
発車してまもなく、山代くんが私の頭をポンポンしてきた。
ハッ!
そのおかげで我に返った私。
…え?…
「 昨日はどうしたの? 何かあったの? ほら、忘れ物っていって帰って来なかったじゃん 」
あ…えと…
「 セイカもだよ、急用が出来たって言って、いなくなっちまうしさ 」
セイカくんも?
私はゆっくり目線をあげ、セイカくんの表情を下から見上げた。
… !?
私を見て笑っている?
なぜ?
「 荷物を運んでいたんだ、見た目よりちょっと重くて騒がしいのと、モフモフの小さい荷物かな 」
「 騒がしいのとモフモフ?って…一体どんな荷物だよ 」
「 まあ、取り扱いには気をつけないと、超危険な荷物ってーとこ… 」
「 ふ〜ん、大変そう 」
引っ越し?
でも、セイカくん…
昨日からほとんど話さなかったから、無口な人なのかなぁって思ってたけれど。
「 それは大変だったな……」
素直に納得する山代くん
「 で? ちびちゃんのほうは?見つかったの? 」
…うん…見つかったよ…
そう思いながら、私は小さくコクって頷いた…
「 そっか、見つかって良かったじゃん! 」
うん…ありがとう…
けど
あの時のことが一瞬にして脳裏をよぎった。
恐怖、不安、絶望感に身体中の震えが止まらなくなって、同時に涙が…
奈々瀬?
え?…
忘れ物…見つかって良かったな…
!?…
優しい囁きの中から青いハンカチが静かに舞い降りる。
次の瞬間…
ギュッとされているセイカくんの手が強くなった。
我慢してるの?…
女性嫌いのはずのセイカくんに
嫌な思いをさせてしまっているんだ。
ごめんなさい…
それなのに…
優しくしてくれて…
ありがとう…
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