第29話



「 行ってきま~す! 」


ヒヤシンスの甘い香りが心地よい気持にさせてくれる通学路。


昨日の雨がウソのように、今日の澄みきった青空を見ると心も弾む。


しばらくして、あの橋の見える場所までくると、自然と立ち止まってしまった。


昨日の景色とは変わり、瓦れきやいろんな物が河川敷に落ちている。


あの橋桁を覗き込んだけれど、もちろんワンちゃんはいない。


元気にしてるかなぁ、チビちゃん


私はピンクの宝石をにぎりしめながら、チビの無事を願う。


きっと今頃はこの青空の下、どこか別の場所で散歩でもしてるのかなぁ、あの優しそうな…



飼い主さんと…



きっと



そうだね



今日は遅刻できない、紗世と約束したし早く行かなくちゃ



もう一度振り返り橋桁を見た後、私は駅に向かった。



改札を抜け、ホームへ歩いて行くと、列の最後尾に見覚えのある男子生徒が!?



う…



何故か怯む私の両脚



そこにいたのは、昨日電車で絡まれた山代くんだった。


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