第13話




予想もしていなかった朝の挨拶に、緊張していた体が更に硬直してしまった。


もともと男子に近づくだけで緊張する私にとって、世界の終わりに近いくらいの過酷な状況なのです。



…お……



もうダメ…



一応、おはようって言おうと思い、ゆっくり顔をあげようと努力したけれど、まったく動いてくれない。



「 ちび ?」



そう、自分のニックネームを呼ばれた私は、震えながら目をつむり、口をへの字にしてちょこんと頷いた。



「 正解!?マジにちびちゃん!?すげえ!

確かに小さいけど、あ、あのさ、確か俺らと同じクラスだよね 」



同じ?



それを聞いた私は、薄目を開けてゆっくりと顔を上げていった。


彼の姿が視界に入ってきて、下のほうから黒のローファー、次にストライプの紺色のネクタイ、そして顎からにっこり笑ったくちもと、そこには見覚えのある八重歯がはっきり見えたのだ。



あッ!?…



大きな声で、彼に言いたかったけれど、言えるはずもなく…


いつも教室で大きな声で笑っている



や……



そして、少し垂れ気味の、愛嬌のある優しそうな目が私を見つめていた。



「 やましろ で~す」



彼は教室にいる時の様ににっこり笑っていた。



クラスメイトの山代くんの笑顔を見たら、ちょっとだけ気が楽になった。


すると今度山代くんは私の正面に移動して、私の顏をジロジロと見ているようで。



「 けどさぁ なんか、いつもと違う 」


いつもと?


そう言いながら、山代くんは私の濡れた前髪を指でフワッとかき分けると、またまたジーッと見つめているのだろう



心臓がドキドキしてきた



男子に髪を触られるなんて初めてで


彼のいる場所が…


もうちょっとで、私の鼻と彼の鼻がくっつきそうなくらい、近い…


突然彼は両手を使い、親指と人差し指で輪っかを作ると、私の両目にピタッとくっつけてきた!



きゃッ…



「 謎が解けた!」



や、やめて!…

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