第35話 首切りオルド
「きゃ~! もっと血を! もっと血を見せて~!」
とはいえ……
「おらおら、どうしたァ‼ こんなもんか⁉ 底なしの参加者ってのはよォッ⁉」
とはいえ、か。
無用は少々言いすぎたかもしれない。一応、ククラの件もあるしな。自分の中でやると決めた以上は、最後まで――
「な、なあ……! あんた! 助けてくれよぉ……⁉ わしは無理やりここに連れてこられたんだ! この老体じゃ、こんな闘技場だなんておっかない場所、生き残ることなんてできねえよぉ……!」
と、どうにかしてやる気を掘り起こしていると、一人の爺さんがオレの足に縋りついてきた。
白髪交じりの薄毛で歯が何本か抜けており、今にも折れてしまいそうなほどに痩せ細っている。こんな老人まで参加させられてるとは、なんとも心苦しいことだが……
「助けてくれって言っても、どうせ生き残れるのは一人だけなんだろ? あんまり意味ないんじゃないか? それ」
助けを求める相手がこの『冷め冷め人間』ではな。それに……
「――なら、死ねやぁっ!」
こんな場所に落とされてる時点で、どうせ真面な奴じゃないだろうし?
予想した通り、爺さんは懐に忍ばせていたナイフを取り出すと、そいつを逆手に持ち、オレの急所目掛けて振り下ろしやがった。
「――ぐっ⁉ いでででででっ! ――ぐっへぁっ⁉」
当然そんな安直なやり方で、このオレは取れやしない。振り被った爺さんの手首を掴むと、へし折る勢いで握り潰してやり、おまけでその顔に膝をお見舞いしてやった。
「お? そんなとこで寝てたら風邪ひくぞぉぉおぉッッ⁉」
すると、吹き飛んだ先には先ほどの筋肉ダルマが。直後、あの巨体にお似合いの斧が――
「ぐゥえェェッエぇああァアあっがガっあが――ッッッ⁉」
爺さんの急所へと振り下ろされる。身から出た錆とはいえ、その末路は同じ男として見ちゃいられんな。
「やっぱあのデカブツ――『首切りオルド』じゃないか⁉」
「なんだと⁉ 素手で人間の首を引き千切ったことがあるっていうあの……⁉」
「なら、まずは『首切りオルド』を殺せっ! 全員でだ!」
気付けば泣き喚いてた奴も、武器を手に取り、殺し合いに興じていた。やはりあれは演技だったらしい。油断ならない奴らだ。
「ハッハッハッハ! お前ら如きが束になろうと、俺様は止めらんねぇぇええぇえぇッッッ‼」
しかし、それもあの『首切りオルド』とかいう筋肉ダルマに蹂躙されゆく結果に。そりゃあ、噂が本当であろうがなかろうが、あんな巨体が斧振り回してちゃ鬼に金棒だろう。一人……また一人と死体が増えていく。
「おい! そこのガキ! テメエも闘えよ!」
「あなたも負け犬なんだから血に塗れなさい! 逃げるんじゃないわよ!」
おっと、サボってるのがバレちまったか。でも、最後に生き残った奴が勝者になる以上、わざわざ体力を消費するのは愚策中の愚策。悪いが最後までこの調子で行かせてもらう。
と、投げ込まれたナイフやら鎌やらをヒョイヒョイ避けていると、
「あ? んだよ~。最後に残ったのは、こんなヒョロっちいガキか~?」
全自動殺害機のお掃除が終わったようだ。
オレと違って血に塗れたそいつは、半裸状態で、血管の浮き出た筋肉、そして数多の傷をこれでもかと見せつけていた。二メーターは優に超えているだろう。そう思わせるのは、パイナップルみたいな頭をしているからだろうか?
「なんだなんだ~? そんな黙ってジロジロ見て? ブルっちまって降参すら言えなくなっちまったか?」
筋肉ダルマ改めオルドとやらは、化物みたいな声と面で、一歩……二歩と距離を詰めてくる。
それに対し、オレは――
「降参? そんな生っちょろい考え、まるで思い浮かばなかったな。さすがはこんなとこに墜とされるだけはある――負け犬。勉強になったよ」
退かない。一ミリたりとも、この場を。
「んだとぉ……ッッ⁉」
瞬間、奴の周りに蔓延る空気が、ピリピリと殺意の目を開き始める。
「殺せー! 俺の斧でそのガキをー!」
「ワシの鎌じゃー! その鎌でガキの臓物を引きずり出せー!」
「指輪よ! その指輪を付けて玉座へと座りなさい!」
最後の瞬間を前にしてか、より一層盛り上がりを見せる観客たち。
「へっ! 随分と生意気なガキだが……見てみろよ? この観客どもの声! 視線! 投げ入れられる武器の数々! 全部、俺様に向けられたもんだ! 観客どもはお前なんかじゃなく、この俺様にBETしてんだよ! この斧も! 鎌も! 指輪もぜ~んぶ、俺様のモンだ!」
そして調子に乗ったのか、そこらに落ちた以下同文をご機嫌に拾い始めるオルド。
すると、ちょうどいい位置に奴の頭部が下りてくる。オレの胸下あたりくらいか。そんな隙だらけな姿、見せられちまったら――
「――ぐっぶぅえっへぇッッッ⁉」
火を吹いちまうぜ。足癖の悪さが。
振り抜かれたその蹴撃は、まさに流れ星が如し。綺麗に顎を捉え、そして刈り取ってみせた。
「余所見をするという考えもなかったよ。勉強には……まあ、初歩すぎてならなかったがな」
首を、その意識ごとな。
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