第8話 『数』を極め、『力』を貯えよ
数多の赤いランプが、夜の学校を赤く染めた。
さすがに時間帯も時間帯だし、代わりの日を設けられるかと踏んだんだが、緊急案件ゆえそういうわけにもいかず、オレたちは深夜にまで亘って事情聴取を受けることに。
当然、
火口も水戸も事の重大さを痛感、罪悪感に締め付けられ、呼応するように涙を流す。しかし、泣いたところであいつは帰ってこない。オレだけは既に次の行動を見据えていた。
◆
翌朝――
GW明けから怒涛のような一日を過ごし、明けた翌日。携帯のアラームにより、オレは起床する。
「おう……
「ああ……。おはよう」
階段を下りてリビングに行くと、スーツ姿の親父が朝食を終え、席を立ったところに出くわした。
「………………」
「………………」
しかし、親父と息子。男同士ならどこの家庭もこんなもんだろう。いつものことだ。でも……
「………………」
今日は少しだけ、様子が違う。しばらく見られていた。まるで『何か』を見透かすかのように。
「今日は……休みだっけか?」
沈黙を破り、視線を下げた親父は、寝間着姿のオレに向かってそう問う。
昨日の件で学校には立ち入り禁止令が出された。警察も色々調べることがあるんだろう。その旨をそっくりそのまま伝えると、
「そうか……。昨日は色々とご苦労だったな。でも、もう勝手にあんな真似するんじゃないぞ? お前まで何も言わずに消えられたら、さすがに……な」
親父は眼鏡のブリッジを人差し指で上げ、言葉を濁す。……が、視線は自然と隣、月岡家の方に。
「……じゃあ、行ってくる。何かする時は、ちゃんと母さんに一声かけるんだぞ?」
そうして親父は腕時計を一瞥したのち、背凭れに掛けてあった上着を取って家を後にした。
勝手にだの、何も言わずにだの、まるで一声かけたら問題ないって言い草だな。全面的に許すわけでもないけど、探すその行為自体は咎めないと? まったく……オレって男をよく分かってやがる。
「あら、匠十。早いわね……。ご飯、食べる?」
お次は長く艶のある黒髪を束ねつつ、リビングへと足を踏み入れる母、
「ああ。それと飯食った後、ちょっと出てくる。あいつを……探しに」
「そう……。無茶だけはしないでね?」
思慮深い、人格者と言って差し支えない人物である。
◆
朝食後、面白味のない私服に着替えたオレは、早々に家を出て街へと繰り出す。
オレが住んでる場所は都会寄りな為、平日であってもそれなりの人間が外を出歩いていた。
「さて、まずは……」
大通り最奥、在るのは遠目でも分かるほどの大きな時計台。針は『十時十分』を刺している。そこまでの距離は十メーター。まずはここから『射程距離』の下調べと行こう。
『力』もあれ以降使用していない為、それなりに貯えができた。やはりクールタイムがそのまま、執行できる『弾』へと変わるらしい。要は強力な変換を行なう為には、連発を控えた方がいいってこった。貯めて貯めて吐き出す。能力を使っていくうえでの基礎ってところだろう。
再確認も済んだため、早速オレは『射程距離』確認作業へと移る。瞳を紫に変え、時計の針を……あくまでも針だけを五分前へと変換する。
『十時五分』――
十メートルは難なくクリア。それから十一、十二、十三と『十時十分』と『十時五分』を行き来させる。
しかし――
「やはりダメか……」
十四メートル以降は変換できなかった。十五、十六と試したが、いずれも能力は沈黙。保有量がないというわけではない。ちゃんと『力』の源は感じるからな。『十三階段』ゆえの縛りがあると見て、まず間違いないだろう。
ちなみに百十三メートルの方も一応は試してみた。結果は言うまでもなく不発だったがな。とにかく『射程距離』は十三メートル。今んとこはこれで決まり。
次、『触れた場合と見た場合とで力に差異はあるのか?』についてだ。一応この能力、目視によって行使できることが確認されている。今しがた調べた『射程距離』で念じたりもしてみたが、そいつは無理だった。
では、その逆……触れた場合はどうなるのか? その検証もしていきたい。対象はこの腕時計。触れながら先ほどと同じように針を変換していく。
するとどうだろう? 『十時十分』――『十時五分』――『十時十分』――『十時五分』。さっきよりも心なしか、スムーズに変換できているじゃないか! 『弾』もそこまで減ってない……ような気がする。どうやら触れながら使用した方が、消費量を抑えられるらしい。いいことを知った。
しかし、これはあくまでも前座。この話にはなんと、まだ続きが――
「ちょっとぉ……! いい加減にしてよ! アンタらに構ってる暇なんて、アタシたちには……!」
あったのだが、昨日耳にしたばかりの聴き馴染みある声が話の腰を折りやがった。
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