第4話 超常の者

 『七不思議狩り』……その甘い蜜に引き寄せられたオレは、情けなくも蜘蛛の巣にかかった蝶が如く、身体の自由を奪われてしまう。


 といっても、かかったのは身体というよりも首だけ。ゆえに早く脱しないと自由どころか命までも奪われかねない。どうにかしなければ……


 まず『七不思議狩り』という言葉が蔓延ってる以上、この手の現象がという保証は、少なくともなされてるはず。つまり、ってことだ。


 では、『十三階段』の一般的な攻略法とは何なのか? 一番手っ取り早いのはやはり、ってことだろう。


 しかし、ありゃあどう考えてものやつだった。十三段目はなく、十二段目に両足を乗せた瞬間、十三段目にすり替わってたからな。


 なら、攻略できる『何か』は今この瞬間、この状況にしか現れないとみてまず間違いないだろう。……と思いたいだけかもしれないが、今はその推理に縋るしか方法はない。


 歴史上、絞首刑を逃れた罪人が何人かいたはず。蘇生しただの、首にかけられた縄が切れただの、その他諸々でな。


 だが、そのどれも今回のケースには当て嵌まらなさそうだ。縄は切れそうにないし、蘇生を願って死を受け入れるってのも、さすがに後ろ向きすぎる。絶対なしだ。


 となると、『十三段目を踏まない』イコール『その段を抜かして十四段目に乗る』。もし攻略できる余地が残されてるとするならば、この手の届く範囲にその『奇跡の十四段目』があるはず! それ以外考えられない!


 思い立ったが吉日。……というか、今この瞬間がラストチャンス。オレは最後の力を振り絞り、あたり構わず足を動かした。あるのかどうかも定かでない、その『十四段目』の為に。


「こんな……っ、とこで……! 死ぬタマか……っ、オレ、が……ッ!」


 もう恐怖心とかそんなんはとっくに消え去っていた。今、オレを突き動かしてるのは――『熱』、『熱』、『熱』。体の底から湧いてくる命の根源。


「絶対……っ、生き延びて、やる……ッ! 『七不思議』ごときが……オレを殺せると……っ、思うな……ッ!」


 傍から見れば、駄々をこねる赤ん坊のよう。でも、それは足をバタバタさせているからだけじゃない。――。生死の狭間にいるこの状況に興奮して。


 すると、恐怖に打ち勝ちし『熱』は、次第に罪人を次のステージ――


「――ッ⁉ み……見つけたぁ……っ!」


 『奇跡の十四段目』へと誘い寄せる。


 あったのは右手側、ちょうど胸あたりの高さだったか。目に見えない十四段目。手じゃ届かない、足が届くくらいの位置。そこに右足を引っ掛けた瞬間――すべてが塗り替わる。


 まず首の縄。こいつが解かれた。すると、宙吊りにされてたオレは、まあ背中から踊り場に落とされるわな。


「がっは……! ぐぁっはぁ……! ッはぁ……! はぁ……ふぅ……」


 尽きかけてた酸素を取り戻し、首をさすりながら上体を起こすオレ。


「これで……『攻略した』って……ことなのか……?」


 たっぷりかいた冷や汗に不快感を覚えつつ、辺りを見回すも……これといって何かが起こるわけでもない。


 解放されただけマシか……。そう少しばかり肩を落とした次の瞬間――


「――なっ⁉」


 先程まで散々苦しめてきたはずの『階段』が、一段一段迫るようにこのオレを襲う。


「なんだ……これ……⁉」


 いや、違う……オレ自身が『階段』になっていた。人でなくなったわけではない。オレの体そのものが一段一段、段違いに隆起、または沈んでいき、段差を作っていたんだ。


 痛みはない。動きが封じられているような感覚も。ただ、オレの奥底にある『熱』に反応を示した。……ような気がした。


 数瞬後、『階段』状態は解かれ、まるで浸透するようにオレのへと潜んでいく。一体、何だったのか? その謎だけがオレの中に残った。


 が、それもまた一瞬のことで……


「これが……『力』、なのか?」


 オレはすぐに理解する。まるで初めからを知っていたかのように――『超常の力』ってやつをすんなりとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る