第359話「嘘偽りのない現実Ⅱ」
大学合格という華々しい出来事と、もう一つ。
あまりにも悲しい出来事が同時に起きてしまった。
岩船先生の件に関しては、内密に・・・ということになった。
とはいえ、同棲している蒼に隠せるはずがない。
そういうわけで、蒼だけはこの事実を知っている。
気持ちが晴れないまま、何となくで日々を過ごす。
高校の授業もなく、受験勉強からも解放された。
特にやることもなければ、考えるのは岩船先生のことばかり。
「友彦! 焼き芋買ってきたよ。一緒に食べようよ」
制服姿で、部屋に入ってくる蒼。
学校帰りだろう。
友彦が沈み込んでいる間、蒼はいつも明るく振る舞っている。
「ほら、冷めちゃうよ」
そう言い、蒼は1本の焼き芋を半分にする。
湯気が立つ半分の芋を、半ば強引にこちらに渡してくる。
寒くてかじかんでいた手が、一瞬でほぐれるような温かさ。
ホカホカな芋を、蒼は笑みを崩さずに食らいつく。
「うーん。おいしい!」
こんな調子で、いつまでいる気なんだろう。
自分でもそう思うが、なかなか立ちなおせないのが現実。
「あつっ・・・」
無心で芋を口につけると、熱さが唇に伝わる。
「あはは、猫舌だね」
気さくに笑って、ちゃんと反応してくれる蒼。
そんな彼女の優しさに、応えるだけの心の余裕が全くない。
もう、3月になる。
卒業式が間近に迫っている。
高校の3年間。
岩船先生は、友彦の中で特別な存在だった。
それは、決してふしだらなものでもないし、ひいきのようなものでもない。
でも、今となっては・・・。
「ただの、生徒と教師・・・」
そういう関係だったのだろう。
どこか岩船先生の特別な何かに感じられていたが、ただの自惚れだった。
そうでありたいと、自分が勝手に思っていただけ。
ただ、それだけ。
期待していただけに、その分のショックは大きい。
ただのその期待も、ただの自分勝手。
全てが自分にかえってくる。
自問自答。
何もかも、嫌になってくる。
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