第23話 白い彼が振った剣
『俺と変わりな』
僕の内側から声が聞こえてきました。
この話し方は“白い彼”でしょうか。
僕の内側にいるのは変態と彼だけですから。
ただ、一つ疑問があります。
それは、なぜこのタイミングで出たいと言ったのかです。
彼はこれまで僕の悩み相談や愚痴を聞くくらいで、外側に出たことはあまりにも少ないのです。
だから、疑問に思いました。
疑問を彼に問いかけると、彼は答えました。
『そもそも、俺はお前の感情に反応して生まれたはずだ。まぁ、気づいたら生まれていたから分かんねぇけどよ』
そんなことを言った彼ですが、答えになっていません。
そう問うと。
『だからよぉ。あの司教、確かサンセリテだったか? の話が本当なら何らかの感情は、特に怒りの感情は攻撃的なんだろ? だったら、あの変態の能力みてぇに、俺も何らかの力を持っていても不思議じゃねぇだろ?』
彼に言われた瞬間。
僕は確かに、と思いました。
僕の中にいる変態は痛みを快楽に変える能力を持っていました。
それなら、白い彼が何か力を持っていてもおかしくありません。
そんな僕の考えが伝わっていたのか、彼は言います。
『だろ? お前が考えている通り、俺にも何かが備わっているかもしんねぇだろ。だから、変わりな。もし、怒りの感情に触れて俺が生まれたなら、剣ぐらい振れるだろうよ』
僕は素直に身体を渡しました。
そして、僕の意識は僕自身の身体を俯瞰するように見ることにしました。
白い彼視点
だぁ~、久々に出て来られたなぁ。
つっても、俺はメインの言うことに逆らう気はねぇからよ、出られねぇことに不満はねぇがな。
俺は身体の具合を確かめるように、肩を回したり足を伸ばしたりした。
そんな俺の様子に、誰かが声をかけた。
「ルエン? どうした? 俺の話にショックを受けていたんじゃないのか? 立ち直れたのか?」
コイツは~、誰だったか。
そう、確か、サリュだっけか。
ん~、でもどうすっかなぁ。
メインの真似でもしてたらいいのかねぇ。
う~ん。
「なぁ、ルエン。どうしたんだ?」
俺が黙っていると、心配そうに声をかけてきやがる。
めんどくせぇな。
だが、無視してんのもなぁ。
しゃぁねぇ、俺は俺の人格としてやってみっか。
「なんだ? サリュ」
「なんだって、お前……」
俺の口調がいつものルエンと違うことに違和感を覚えたのか、サリュは近づいて顔を覗き込んできた。
じろじろと見てくるその視線に鬱陶しく感じた俺は言う。
「何、見てんだ? うぜぇな」
俺はサリュの頭を掴んで押し返す。
そんな俺の態度にサリュは言った。
「お前は誰だ? ルエンじゃないな?」
さすがに、いつものルエンと違い過ぎるのか、速攻でバレちまった。
だが、俺は気にせず、いつの間にか手から落ちていた木剣を拾った。
「サリュ。ルエンは剣の才能がねぇんだよな?」
「あぁ、それよりおま」
「んで、この剣ってのは押し切るためにあんだよな?」
サリュの言葉を聞かず、俺は言いたいことを言う。
「チッ。無視しやがって。そうだ。その剣は押し切ったり、押しつぶすためのもんだ。東洋の剣は切り裂くためのものらしいがな」
「ふ~ん」
俺は拾った木剣を眺めながら、サリュの言葉に生返事をする。
そして、俺は二、三回剣を振ると、「ふむ」と一つ頷き、サリュに言う。
「サリュ、ちっと俺の上段からの振り下ろしを受けてくれや」
「なに?」
俺への反発心の所為か、サリュは即答しなかった。
だが、俺のことを追求したいサリュに、さらに俺は言った。
「俺の上段斬り受け止められたら、俺のことを話してやってもいいぜ。もしかしたら、ちっとはルエンのことが分かるかもしれねぇぞ」
「なんだと?」
俺の言葉に、サリュは反応したあと言った。
「しっかりとお前のことを、ルエンのことを教えてもらおうか」
そう言って、俺の正面で木剣を持ち上げた。
「あぁ、受け止められたならな」
俺は関節の動きを確認するかのように、丁寧に剣を持ち上げ、振り下ろした。
カァン
木剣をぶつけたにしては軽い音がした。
そして、俺の剣は振り切られていた。
「お前、どういうつもりだ?」
サリュは口を開いた。
「お前、俺を殺すつもりだったな?」
その言葉に、俺は口角を上げ、答えた。
「もちろん」
「お前ぇ」
「おい、何キレてんだ?」
「殺そうとしてきてんだ。当たり前だろうが」
頭に血が上ったようで、サリュは完全にキレた様子。
そこに俺は一言。
「この身体、誰のだ?」
「あ?」
「だから、この身体は誰のものなんだ?」
「それは、ルエンの……」
俺の言葉に、ようやくサリュは気付いたようだ。
「そう。この身体はルエンのもの。そして、お前が才能を感じなかった奴の身体から、さっきの剣が繰り出された。お前が受け流すしかできなかった剣を、な」
俺の言葉で完全に落ち着いたのか、サリュは言う。
「すまん。頭に血が上り過ぎた。さっきの勝負、俺の負けで良い。お前の剣を受け切る……。受け止め切らなければ、俺の勝ちではない。だから、お前のことについては聞かない」
その言葉に思わず、俺は笑ってしまった。
「ハハハハハ」
「何がおかしい?」
怒りを伴った疑問を俺に言う。
「そりゃおかしいだろうよ。お前に剣を受けさせたのは、俺がそうして欲しかっただけだからな。だから、俺とルエンのことを教えてやろう」
「何?」
「お前、いやお前たちの国は、ルエン管理したいだろうからな。この機会に教えてやるっつてんだ」
俺は嘲笑を浮かべ言った。
「ほれ、聞きたいことを聞けや」
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