第20話 憤怒の鬼の能力
サンセリテ様に鬼の発生理由についてお聞きして一週間。
ようやくサンセリテ様の予定が合う日になりました。
これまでの一週間も変わり映えなく、体力づくり、教養、昼寝、筋トレをこなしました。
人によっては退屈に感じるかもしれません。
僕も少しは苦痛を感じていましたが、単純な繰り返しの日常というのは悪くはありませんでした。
何よりも一週間前の自分よりも長い距離を走れる。
長い時間、筋トレをこなせる。
そう実感できていたからこそ悪く感じたことはありませんでした。
さて、今日も今日とて体力づくりの朝のランニングです。
約一時間半もの間、走ります。
一時間半をただ流すのではなく、途中でダッシュを入れたり、徒歩を入れたりするなどの緩急をつけることによって、より心肺機能を鍛えられることができています。
もちろん、体力も。
そして、身を清め、ご飯を食べ、教会に向かいました。
前回のときと同じようにサリュに先導してもらい、教会に入り、サンセリテ様に挨拶しました。
サンセリテ様は前回と同じようににこにこと穏やかな微笑みを浮かべたまま、僕とサリュの挨拶に返事をします。
その後、サンセリテ様の案内に従い、前回と同じ部屋に通してくださいました。
僕とサリュが席に着いたのを見計らい、サンセリテ様がおっしゃいます。
「では改めまして。おはようございます。サリュ君、ルエン君」
「「おはようございます」」
僕とサリュが同時に挨拶の言葉を発します。
僕らの様子にサンセリテ様が穏やかな表情のまま頷くと、おっしゃいました。
「さてさて、今日は鬼の能力について、でしたか……。どれから話すべきでしょうか……」
悩むように言葉をこぼすサンセリテ様。
そして、僕に向かってサンセリテ様は質問しました。
「ルエン君。君の大罪は確か、《色欲》、《怠惰》、《憤怒》の三つでしたよね?」
「そうです」
「ならば……。今日は前回の話と同じ憤怒の鬼の話からにしましょうか」
「「はい!」」
「はは。元気でよろしい」
僕とサリュの返事に、機嫌よさそうにサンセリテ様は話し始めました。
「まず、鬼の能力というのは大罪によって判明しているものと、判明していないものがあります。これは当然の話で、能力がはっきりと判明するほどの頻度で鬼が発生すると、世界が発展する余地がなくなってしまいますから」
「たしか、停滞した世界を発展させるために鬼が発生するからですよね?」
僕の確認に、サンセリテ様は「よく覚えていますね」とお褒め下さいました。
「ルエン君が言った通り、停滞した状況を変える為に鬼が発生しますが、これはあくまで教会側の仮説というのを忘れないようにしてください」
「はい」
「では続けます。憤怒の鬼の能力というのは一番分かりやすいのです。なぜだか分かりますか?」
サンセリテ様の質問に、僕とサリュは首を傾げました。
「ふむ。少し質問を飛ばし過ぎましたか。そもそも人が怒りを感じると、どのように行動するか分かりますか?」
「分かりません……」
僕は素直に答えました。
そんな僕に、サンセリテ様はおっしゃいます。
「ルエン君はこれから経験するかもしれませんから、いまは分からなくても大丈夫ですよ。では、サリュ君。分かりますか?」
「まずは、怒りを抱く原因にもよりますが、小さい怒りなら不満をこぼすでしょうか……」
「ふむ。では大きければ?」
「大きければですか……。より大きい怒りほど攻撃的になるのでは、と思います」
「というと?」
「原因が明確なものほど、怒りの発散する先が必要だと思いました。そして、怒りが大きすぎると攻撃することによって発散するのでは、と……」
サリュとサンセリテ様のやり取りを真剣に聞きます。
サリュが全て正しいとは思いませんが、一般的にはそのような行動を取るのだなと思っていると、サンセリテ様はおっしゃいます。
「そう。怒りとは攻撃による発散がしやすい感情になります。他の大罪にも言えることですが、周囲に対して攻撃的になるような罪源はそれなりにあります。怒りはそういう罪源の一番理解しやすいものになります」
その言葉に納得したのか、サリュは頷いています。
「さて、ここまで言えば、もう分かるのではないのですか。憤怒の鬼は攻撃能力の圧倒的上昇が特徴になります」
サンセリテ様の言葉に僕たちはあまり納得がいかず、素直に飲み込むことができませんでした。
その雰囲気を感じ取ったのか、サンセリテ様はおっしゃいます。
「どうやら、二人ともあまり納得できていないようですね」
「それはまぁ、そうです」
サリュがはっきりとしない返事をします。
「う~む。記録の中での話でも構わないでしょうか……。実際にどのような鬼がいたのか説明しましょう」
少し考えたのちに、サンセリテ様はおっしゃいました。
「まず、憤怒の鬼の大きさですが、ベースとなった人間の三倍ほどの巨体になるようです」
「さ、三倍ですか!」
「約、ですがね。そして、その鬼の腕力は人間の両足を掴んで引き裂けるほどだったらしいです。あくまでそういう記録があったという話ですが」
「それは意味が分からないですね……」
「でしょう?」
サリュが信じられないといったように、言います。
それに同意する様におっしゃったサンセリテ様ですが、ここで表情を真剣なものに変えておっしゃいます。
「ですが、この話はあくまで記録上にあったもの。大げさに記したものかもしれないですが、より凶悪な腕力を持っていたかもしれません。それほど、不確定な話です」
そこで、サンセリテ様は表情を緩めました。
その雰囲気に誘われるように、僕たちも気を抜きました。
「さて、ルエン君が持っている残りの大罪スキルの鬼ですが。今すぐ説明しましょうか? 時間はまだあるようですし……」
そんなサンセリテ様の言葉に、僕たちは互いに視線を合わせ頷きました。
「続きを聞かせてください」
「よろしい」
まだ、サンセリテ様の話は続きます。
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