第8話 僕のスキル
「んんっ!」
ブリヤン様が空気を整えるためでしょうか、咳ばらいをしました。
「そういえば、ルエン君は奴隷として扱われていたからね……。文字を勉強するような機会はなかったという事かな?」
「そ、そうです」
ただの確認なだけのはずなのですが、言葉にしようのないプレッシャーを感じてしまい、どもってしまいました。
僕は何か気を悪くなさるような事を言ってしまったのでしょうか。
悩んでいる間にも、ブリヤン様は気を持ち直してくださったようで、特に変わった様子もなく、おっしゃいました。
「なら、私かブラーヴン殿が確認してもいいだろうか?」
ブリヤン様は気を使ってくださったようで、そんな提案をして下さいました。
もちろん、僕は「はい、お願いします」と答えて、スキルの載っている板を渡しました。
数秒程でしょうか。
ブリヤン様が僕のスキルを読み取った板を見ていると、表情が不意に厳しくなりました。
あまりにも恐ろしい表情に、僕は極度の緊張状態になりました。
緊張した状態になって想像することは、自分はもしかして大した能力は持っておらず、それどころか自分の能力は、国の不利益になるものだったのか、と。
そうして、頭の中がぐるぐると悩みが増す。
ぐるぐる、ぐるぐる、と頭の中が混乱していき、僕はどうしても我慢できずに、言ってしまいました。
「その、ブリヤン様……」
「どうしたんだい?」
「僕は処分されるのでしょうか?」
「は?」
僕の言葉は、ブリヤン様にとって考えてもなかった言葉だったようで、驚きに目を丸くして唖然としていました。
僕はおかしなことでも言ってしまったのでしょうか。
国に不利益なスキルを持っている自分は、処分されるのではないのでしょうか。
その言葉に、ブリヤン様は怒ったようにおっしゃいました。
「何を! 何を君は言っているんだい?」
怒鳴るかのような勢いでおっしゃった後に、ブリヤン様は怒りを抑えるように僕に質問なさいました。
僕は考えていた事を伝えました。
ブリヤン様の表情から僕のスキルは国にとって不都合だったのだろう、と。
そして、国にとって不都合な存在である僕は国の為に処分されるのだろう、と。
僕の発言を聞いた瞬間、ブリヤン様は悲しそうに見えつつも、物凄い怒りを抱えているかのような表情でおっしゃいました。
「君は……。ルエン君は、私たちの運営する国が、君一人を抑える事が出来ないと……、そう、思っているのかな?」
怒りを抑えているのでしょうか。
ぶるぶると震えるように、身体を震わせ、目に怒りを溜めて、僕を見ます。
僕にとっては、当たり前だった誰かの怒りを溜める視線。
そんな視線にずっと慣れていたはずの僕だったが、何故かブリヤン様のその視線には恐怖のような感情を抱きました。
これは不安でしょうか。
僕の困惑に、ブリヤン様は気付いていらっしゃらないのか、怒りを抑えるように声を抑えて、僕に向かっておっしゃいました。
「そういうつもりなら……。そういうつもりなら。酷く、不愉快だよ。君自身がどれだけ辛い境遇にいたか、私には想像もできない。だが、何の力もない子供を国に都合が悪いから、という理由で処分を言い渡すほど、この国は弱くないよ……」
そう言われた瞬間に、確かにそうだと思いました。
僕程度の存在がいくら国にとって不都合でも、わざわざ処分を下すような真似をする必要などないではないか、と思いました。
僕は何も出来ない奴隷なのだから。
そんな風に納得していると、ブリヤン様は大きく息を吐き出した後に、表情を戻されました。
そして、ブラーヴン様におっしゃいました。
「ブラーヴン殿、ここを見てくれ。これはアレ、だよな」
「これは……。そう、ですね。しかも、既に三つもですか」
ブリヤン様とブラーヴン様は、僕のスキルが表示されているだろう板を見て、何かをおっしゃいました。
“アレ”とは、何なのでしょうか。
どうも僕の分からないところで納得する何かがあるようです。
先ほど、ブリヤン様を怒らせてしまった僕が何か発言するのは、少し気が引けてしまいます。
僕が何も言わないことに、ブリヤン様は気になったようで、申し訳なさそうな口調でおっしゃいました。
「ルエン君、先ほどは怒ってしまってすまなかったね。君が言っているように、君のスキルは少しという言葉では済ませられない程に、まずいスキルがある。まずは、君のスキルを見てみてくれ。読み方と意味はこちらで教えよう」
ブリヤン様は僕の隣に、座る場所を移しました。
「では、ルエン君。これを見てくれ。今から上から指で差して読み上げていくから、確認してくれ」
そうおっしゃられたブリヤン様は、僕の右側から指で差しながら読み上げてくださいました。
「上から、《回復促進》、《苦痛耐性》、《再生促進》、《鈍化》、《病気耐性》。 以上が君の技能や特技の様なものだ。最後に君の状態を表す《状態異常:部位欠損》だね。ここまでは、そんなに問題のあるスキルではない。君がどれほどの過酷な環境で生きていたかというのを表しているけどね……。あぁ、私がそう思う理由はまた学ぶ機会があるからそのときに、ね」
苦々しい表情でブリヤン様はおっしゃいました。
今、挙げていただいた技能の名前に、僕は“はて”と疑問に思いました。
確かに、そこそこ苦しい思いはしたと思いましたが、技能になる程でしょうか。
あまり納得はいきませんでしたが、ブリヤン様がおっしゃいました。
「さて、君が今どう感じているかは私には分からないが、君が気になっているだろうスキルを今から読み上げる。先に言っておくが、今から言うスキルは絶対に口外しないでくれ。私たち、国の上層部の人間たちはある程度知っているスキルだが、一般の人には伏せられているからね」
ブリヤン様のおっしゃっていることを理解した僕が、最初に思ったことは、“そんなことを僕に教えていいのだろうか”、というもの。
その旨をブリヤン様にお伝えしたところ。
「これまでの歴史に似たようなスキル保持者はいたが、知っていようが知らなかろうが困ったことになったのは変わりない。むしろ、知らない方が何を起こすか分からないという意味で怖い。だから、教えよう」
そうおっしゃられました。
その答えに何となくですが納得した僕は、ブリヤン様にスキルについて聞きました。
「ブリヤン様、その問題だというスキルはどれで何と言うのでしょうか?」
僕の言葉にブリヤン様は一つ頷いた後に、板の最下方を差し、おっしゃいました。
「この三つのスキル、《色欲の種》、《怠惰の種》、《憤怒の種》だ。これらスキルは、おそらく大罪スキルと呼ばれるものだ」
「大罪スキルですか?」
スキルというもの自体に、慣れていない僕は大罪スキルなるものが、どうしてまずいのか分かりませんでした。
ブリヤン様は、僕の様子に気付いていらっしゃるようで、こうおっしゃいました。
「ルエン君。君はこの大罪スキルの恐ろしさはわからないだろう。だから、少しでもどうまずいか理解できるように私の言う説明を聞いてくれ」
そうおっしゃったのちに、ブリヤン様は大罪スキルについて説明し始めました。
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