4
「あれに見えるのって……」
アカの指の先には、スクリーンに写った、人影。
その場所にはあの二人しかいなかったはず。
気づかれずにそこまで辿り着いた、かなりのやり手。
倒れている二人に、ソレは手をかける。
「「やめて………」」
今度はアカとクラの二人が、か弱い声で静止を促した。
が、そんなものは届かない。
ロは、腹を蹴られた。
頭からの出血は止まらない。
獅は、髪を握られ頭を上げられた。
まるで奴隷のように扱われるかのように。
「汚穢!!ここから出して!!!!!」
アカは、叫んだ。
自身の子供が、いいようにされている。
だと言うのに、汚穢は冷たく言い放った。
「無理」
そしてその影には、化け物がいた。
誰にも従わない、無秩序の、化け物が。
「行ってもどうせ、勝てない」
「……私たち四側星が?」
「ええ、だって彼女、こちらの精場に気付いてる」
不意に、款が口を開いた。
「もしかして、剕ですか?」
その声は、震えていた。
だが、知らなければならない。
自分のためにも、フィソファのためにも、生神のためにも。
「いや、君がその心配をする必要はないよ、款」
だがそれは、すぐにアカによって否定された。
自分が一番混乱していると言うのに。
(まだ降隣してないはず……なのに………彼女は確実にどちらかの実母……こんな早くなんて、聞いてない……)
一般的に、子供の親は自身の子供を完全に嫌いになることはないと言う。
だが人影から感じられるのは、完全な敵意。
これまでの汚点を見つめるような、哀れみの目。
そしてそれは、手中にいる獅に言い放った。
「…………よく頑張ったよ」
「……」
獅の意識はない、はずなのに、息は取り戻した。
そう、つまり生き返ったのだ。
理由などない。
ただの、慈愛。
だが対照的に、ロには冷たく言い放った。
「………親しき仲にも礼儀あり、だよカス」
ドゴン!
重い音の後にまた、ロは地面にへたれこんだ。
起き上がる気配など感じさせずに、ゆっくりと。
「せっかくあんたを連れ戻しに来たのに、もういいや」
彼女はゆっくりと腕を上げる。
技の出し方はロに瓜二つだ。
「やば」
クラが口を開いた。
だが彼女の能力では、届くはずもない。
時間の主も、運の主も、運悪くこちらを見ていない。
他に概念に干渉できるものがいるのか……
「やっぱいいや」
ポトンと、ロは捨てられる。
「これ、誰か見てるね?じゃあ、後で伝えておいてよ」
「……」
「--------------」
アカとクラ、そして汚穢の精場にいた全員が、唇を噛んだ。
何を言ったのかは、わからない。
だがやはり存在していたのは、大きすぎる実力差。
心の中で、火が沸る。
絶対、絶対、殺してやる。
兇と福 簪 @Miebara
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