3
「堕ちて…」
「?」
「右京」
ズン!!
またあの力だ。
この世界に生まれてはいけないものが生まれたような。
そんな感覚。
同時に、十字架の右手にある十字架が落ちる。
「禁忌を、この世界に持ち込むのですか?」
「それは我々が言えることか?」
まるで自分たちが生まれてはいけないものであるとも捉えることもできるその言葉に、ロはわざと口を挟まない。
それをわかっているから。
魁、先駆け
「後ろを見て?」
「いや?」
ズドッ!
瞬間、十字架がロの腹を貫いた。
予想などできなかった、後ろを見ておけば防げたかもしれない攻撃。
だがまだ、ロは軽い顔を隠さない。
「罠、ですよね?」
「………ほぅ」
刹那、獅はロの背後を取った。
「………見ろよ………」
ズバッ!
今度は、刃物で背中が切られた。
が、やはりロは後ろを向かない。
「おいおいおいおい…………」
「絶対に、見ません」
痛みを我慢しながらロは腕を地へと下げる。
「上がれ!!!」
刹那、地面の色が全て抜け、天へと昇った。
半径は10mほど。
ロは軽く賭けたのだ。
実体なるものがそこにあることを。
ズッ
音が出そうなほどの濃さに、何も反応はしない。
「惜しいな」
傷は、背中を超えた。
ブシュッ
頭からの出血は増すばかり。
だが、まだ、まだ、ロは笑っていた。
「ここまで来ると不気…………」
……?
獅の体に、色が張り付いた。
緑
「ッ」
今度は獅の背中が、裂けた。
「…………」
(十字架が破壊された?いや、先程の広さの攻撃では当たらないはずの場所にあるはずだろ?相手の能力は色を動かす、それが関係していると思いたいが………)
それ以外の要因の場合であれば、争い合っている場合ではない。
そしてロは、呆気としていた。
なぜ攻撃が当たったのかは見当なし、だがコレは限りなくチャンスに近い。
逃しはしない。
先程のように、地面からの色を出そうとした。
だが、場所は変えなければいけない。
今立っている地面は無色だから。
「死者の冒涜なら、私だけがする」
キザなセリフと共に、ロは獅の四方八方を緑色のトゲで囲む。
まさに死に際。
「待っ……」
「無用」
ズバババババ…………!
無数の色が、獅に突き刺さった。
槍の間から見えるのは、鮮血と動かない体。
戦いは、終わった。
「………ッ!」
ガタンと、クラが汚穢の精場内で立ち上がる。
その衝動で落ちた椅子は、誰の手にも止められることなく音を立てて倒れた。
彼女の顔にあるのは明確な殺意。
「落ち着け、クラ」
争いが始まって以来、アカがクラに対して初めて口を開いた。
先程までの険悪さは残ってはいるものの、事がさほど重要ではないとでも言うかのように足を軽く組んでいる。
「…………は?」
素の自分を出してしまうほど、クラは胸のざわつきを覚えていた。
これまでにない怒りと、殺したいという衝動。
彼女にとっても初めての感覚に、誰も水を差すものこそはいない。が、誰もが汚穢の精場からの脱出は許さないとでも言うかのように鋭い目を送る。
「これは私たちの争いではない、黙って見てるんだ」
「………」
そんなことは百も承知、だがやはり、抑えきれない。
彼女は、腕を上げる。
その瞬間………
バタン!
ロが、倒れた。
先ほどの出血だけではない、また他の外的要因によるもの。
やはり十字架が破壊されたのはロからではなかった。
では、誰だ?
厭な、予感がする。
ただ、わかるのは、誰かが、彼女らを、助けに来たこと。
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