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「では二人、仲良くなれたかい?」
亀塚公園という場所のベンチに座っているアカに、墓靄とオキシの二人が近づいてくる。
「はい…」
(……仲良くなりすぎたかな……)
二人の間の距離を見てアカは少しぎょっとする。
更に我が子。
とんだ追い討ちをかけられてしまった。
「まあいいだろう。仲良くなる分には」
すっと彼女は椅子が立つと、筵へと歩いていく。
その後ろ姿は荘厳そのもの。
「……これからどうするのですか?」
墓靄が口を開く。
「ちょっと寄り道してから、行くべき場所へ行こうか」
とアカは言い、草を三本千切り一本ずつ目の前の女達へと渡した。
「これは私の精場への道。さあ行こう」
ブン
トッ
三人が再び地へと足をつけたのは少ししてから。
それまでの数秒は、無と有の間を行き来していた。
「ここがアカさんの、精場…」
その場所には、限界という存在が感じられなかった。
どこまでも広く、白い。
足をついたのは白い床だが、どこまでも見える向こう側あったのは、簡易的な白い机と椅子。
だが目の前にも不思議なものがあった。
ソレは試験管のようなもので、中には白い液体が入っている。
そして栓も、ご丁寧に白かった。
「これは、なんですか?」
墓靄が尋ねる。
「精場については聞かないの?」
「いや、それはその……」
「冗談だよ。まあ精場は見ての通り白だけでできていて、また白しか入ることができない。色彩というものもないが、綺麗だとは思わない?さっきの草はこちらもさっき言った通り道だ。あそことここを繋ぐためのね」
後半に関してはさっぱりな二人は首を傾げる。
が、アカはそれを承知の上で話を続けた。
「この試験管は私の光を溜めているものだよ。試しに一つ開けてみよう」
そう言ったのち宙に浮くそれを取り、白い栓をポンと取った。
中から白い液体が出てくる。
粘度は水と同様かそれ以下、それ以外にはあまり特徴はない。
「……これだけ?」
あまりの無にオキシは素っ頓狂な声を上げる。
「まさか、用途はあるけど今は見せれないかな」
アカは元の場所へと戻す。
(見せてあげると言ったのは誰でしょう)
(……)
期待が削がれた二人は不貞腐れた顔をして、前へと歩くアカを追う。
そして机と椅子にたどり着いた。
「さあ、座って」
机の上には何もない。
椅子も。
「これから二人に話すのは、この精場についてだ」
「はい」
「まず精場というのは、この世に存在しない奧処という場所にある。そして精霊がいつもその真ん中にいる。真ん中と言っても普通の人の精場は円だからその中心かな。普通の人だと半径10mくらいの精場に7本線がある。それは線と呼ばれて、その人の強さの指標となる。また真ん中に一番近い線には5段階あって、一個動くと閃と呼ばれる黒か白の線が精場にできる。真ん中に近ければ強い。その線を超え、真ん中にいる精霊に限りなく近づいた状態の事を極限といい、私のようにこのような限界のない場所になる」
「…」
「説明はこれくらいかな。あと二人の精場は……」
「ないです」
とオキシ。
「あります」
と墓靄。
「へぇ、じゃあ墓靄の精場、見せてもらおうかな」
またもや驚いた顔を隠せないオキシは無視し、アカはこちらに目を向ける。
「いいですけど、じゃあ行きますよ」
ブン
…
「あれ?」
「そうなんです、私の精場、逆さまなんです」
「これは昔から?」
「…はい」
「成程」
足を地面につけているはずなのに、重量運動の崩壊か体は足と頭の位置が逆転してしまい意図せず逆さまの状態になる。
「真ん中は、空洞か」
重要な中心は、抉れていた。
また線はない。
これが示すものは…
「多分墓靄は、元々有精者だったけど精霊に逃げられて無精者になっちゃったんだろうね」
(じゃあさっきの龍はこの子の意図せずの降隣かな?それを塞いでいる五従も興味深いな)
ますますアカの興味が湧いてくる。
が、そろそろ散策はやめたほうがいいと、直感的に感じる。
「じゃあ、戻ろうか」
ブン
トッ
再びの地面。
安心感が一番強かった。
「久しぶりに行きましたけど、やはり嫌なものですね」
「まあそうだろうな、そしていとしの我が子は………寝てるな」
スー、と音を立てているのはオキシ。
机のほうがやや高いのか組んだ腕は少し解けてしまっている。
「じゃあ私らも目的地へと行くか」
目配せでアカはオキシを持てと合図する。
肩から入った墓靄は、あることに気がついた。
(この人、筋肉すご)
彼女も半端ではない努力を繰り返してきたのかと思う。
私も、強くならなくてはな。
「じゃあ、行こうか」
ブン
トッ
「やぁ、お疲れ」
場所は汚穢の精場。
蝋燭は二つずつ、灯りを灯していく。
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