EP3 誤った昼前
カランカランとドアベルが鳴る。
俺は去年から春、夏冬の長期休みにはこのヴィンテージ感溢れる喫茶店「珈琲キヤーナ」でアルバイトとして雇ってもらっている。
「いらっしゃい走馬君。今年も手伝ってくれて嬉しいよ。じゃあ早速だけどもうあと30分もしたらランチタイムだからよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
店長の
「走馬君が2年生になっても変わらずうちで働いてくれて助かるよ。走馬君仕事テキパキしてるし、うちのメニュー覚えてくれてるから毎回長期休みの時期は捗るんだ」
「いやいやそれほどでも。俺ここ好きなんで、ちょっとでも力になろうと頑張ってるだけなんで」
「嬉しいこと言ってくれるな〜」
有馬さんはニコニコしながらテーブルを乾拭きしている。するとハッとして俺に問いかけてきた。
「そういえば走馬君、2ヶ月前くらいに一緒にきた彼女とはうまくいってるのかい?」
「え!?彼女!?」
「知らないふりしても無駄だぞ?一緒にミルクティー飲んでただろ。あの見るからに年上の子、確かに可愛い子だったな。走馬も隅におけないなぁ」
椿さんのことだ。6月に俺は椿さんに俺の行きつけの店と言って、キヤーナに連れて行った。俺は好きなミルクティーを注文したら、「そんなに美味しいなら」と椿さんもミルクティーを頼んだ。そして確か椿さんの友達の話をしてて、あまりに可笑しい話だったから周りを考えずに笑っちゃったんだ。あ、そうしてたら有馬さんがすごい満面の笑みで俺らにパンケーキをそっと置いてくれたんだ。あの時は常連へのサービスだとばかり思ってたけど、そうか、カップルだと思われていたんだ。
「そういうの興味ないと思っていた走馬が彼女連れてくるんだもん。僕嬉しいし微笑ましいからさ、ハチミツをふんだんに生地に入れたんだよ。特別だよ」
「確かに甘くて美味しかったです。椿さんもすごく気に入ってて」
「椿さんって言うのか!!」
やっちゃった。
結局そのあと素直に椿さんとの関係を言えずに、付き合っているということになってしまった。
12時。今季初仕事のランチタイムが始まった。
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