・【解説】
今回の意味怖的オチを読み解くポイントは「蜘蛛の巣」です。
実は、木村は既に亡くなっています。その遺体は崖下にあり、見つけてもらうために木村は霊体となって語り手を連れ出したのでした。
語り手が気づいた違和感とは、木村の足音がしなかったという事です。細い一本道で木村が前を歩いているにもかかわらず、語り手の顔に蜘蛛の巣が引っかかるのは、彼がすでにこの世の者ではなかったからでしょう。
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ということで、いかがでしたでしょうか。
実はこのお話、裏話がありまして、お話の中に「木村」という固有名詞が登場するじゃないですか。
五十一話の「怪文書」の解説でも書きましたが、固有名詞にしているのにはいくつかの理由がありまして、実は「木村」は、この短篇集ですでに登場している人物だったのです。
詳しくは三十一話の「ことだま」を読んでみてください。
それによると語り手と木村の身長の関係が分かります。木村のほうが語り手より身長が高いのです。( 三十一話のあと、当然ながら語り手は体を元に戻してほしいと訴えたので無事に元に戻りました。)すると、語り手の前を歩く木村のほうが背が高いので、背の低い語り手の顔に蜘蛛の巣が引っかかるのは物理的におかしいのです。つまりそれは、木村が霊体となり物理的干渉を受けない存在となったため蜘蛛の巣をすり抜けたから、ということでしょう。
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見知らぬ人の死と、見知った人の死では印象が全然違ってきます。短篇集なので、基本的には一話ごとに新たな人物の物語に触れることになるわけですが、実は彼らにも過去があり、他の物語に登場する可能性のある人物だと想像すると、これまで読んだお話、またこれから読むお話に抱く印象は変わってくることでしょう。
この短篇集で同じ名前や苗字が出てきたら同一人物ではないかと疑ってみてください。すでに木村以外にも、いくつかの短編にわたって何度か登場している人物が複数人います。
一味違った楽しみ方ができるかと思いますので、是非読み返してみてください。
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