第3話 ダンジョン


今日も仕事に行く


仕事先はもちろんいつの間にか世の中に生まれた「ダンジョン」だ


世界に数あるダンジョンの中でも僕が行くのは軽トラで行ける範囲、不人気なダンジョンに向かう



「こんにちは」


「はい、こんにちは」



安賀多のばあさんか



ちゃんと認識票を通して中に入る



ダンジョンは管理する人間が必ずいる


ダンジョンは危険なものであるという認識がある、中にはモンスターが居るしごくごく稀に中から出てくるモンスターもいる


問題になることは本当に稀であり、人気のダンジョンあらともかく田舎のダンジョンなんて大抵は老人がいるだけだ


ダンジョンが氾濫すると最も危険ではあるが氾濫する危険性は低い


ダンジョンの入口をくぐり、洞穴のようなダンジョンを進む


臭くもない、ちょっと湿気てる、苔がいい具合に生えている


苔はポーションの素材になるらしい、ナイフで削っていく


ズタ袋にいれていく



ペチャンッ・・・・・ペチャンッ・・・・・・・・・



ウシガエルよりも大きな大きなカエルが近付いてきた


音を出さないように気をつけ包丁を投げる


運良く脳天に当たったようでピクピクと動いている


血を抜いて苔とは別の袋に突っ込んでおく


また苔をこそぎに戻る


これをずっと無心に続ける



たまに魔物が出れば殺して袋に入れる、たったそれだけ



腕時計から音がなったのでもう昼だ


ズタ袋12個分か


カエル二袋に苔10袋


体に巻き付けるように大荷物で出ていく



それとはカエルの中でも二匹大きな個体を出しておく



「お疲れ様でした」


「お疲れ様でした、これどうぞ」


「まぁありがとうございます!」



軽トラに荷物をくくりつけていく


カロリーバーと水を飲む



ポーション生成工場の一つに20分ほどかけて持っていく


ギルドに持っていってもいいが鮮度が違うらしい



「いつもありがとうございます!これ試作品です!良ければどうぞ!」


「ありがとうございます」



試作品ついでにポーションを原価で数本もらう


試作品の薬なんて以前では絶対に飲まなかっただろう、楽しみだ



終わったら商店街に行く、大きめのウシガエルほどのダンジョン産のカエル


ダンジョン産というだけで魔力のこもった高級品だ、食料の供給が安定しない今だからこその需要かも知れない


見た目は悪いが味は普通に鶏肉だ


安価に卸してもらうことにした、転売や仕入れ目的と思える人間には売らないようにお願いしておく


仲介業者によって店舗に商品が行くのは悪いことではないだろう


食品にはある程度相場も決まっているし、店舗への仕入れの手間を軽減できるのだからWIN-WINだ


だが世の中の混乱に紛れていらないことをする輩というのはどこにでも存在する


普通のカエルをダンジョン産だと偽って売るもの、ただ商材として安く仕入れてただ高く売るもの


自己の利益のためだけに購入した商品を更に高値で売り捌く人間もいる



すべてが悪いわけではない



例えば車、買っておいて大事に保管し、数十年後に売るなんて人もいる


たしかに驚くほど高値にはなるが管理維持費も考えると駐車場にしたほうがよほど儲かるだろう


しかし本当に欲しい人に届けることが出来るし、管理維持が苦ではないのならありなのかもしれない


不動産なんかはこれに近いかもしれないな


価値が出るまで寝かせてから売る



人気の商品の転売も許せないな


誰かに届けという転売ではない、自分たちで買って本当に買いたい人の妨害をした上で高額で売り捌く



しかし最も許されないのは最近増えつつあるダンジョン食品の転売だ


価値があるから高額になるのはわかる


だけど今は場所によっては食糧難なのに、飢えた子供がいるというのにそんなことをするものが後を絶たない



「ありがとうございます!」



家族経営の商店街の肉屋、スーパーよりも転売などの意味では信用できる


家族で経営しているのだろう、朗らかな顔で礼を言われた



・・・・・




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もう一度君と会うためなら僕はなんだってする(暗いダクファン・閲覧注意) mono-zo @mono-zo

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