36. 魔性の女(24)

葛城社長は大成功といったが、シカゴのストアーから発注書をもらった訳ではない。

提示した価格はOKだが、ULはいうに及ばずFCCやFDAの認証を受けた最終的な製品を10台納品し、エイジングテストなどのストアー独自の商品テストを通ってから、正式発注するということだ。

カタログハウスや他の顧客も同様だった。


これでは、今からクリスマス商戦に大量生産してストックしておくにはリスクが大きすぎるし、商品テストに通ってから量産しては、今度は納期が追いつかない。

ストアーにFCCとFDAの認証の代行を頼むという件を、葛城社長はすっかり忘れていた。

ブランド名をどうするかも、取扱い説明書の作成を依頼する件もすっぽりと抜けていた。

「今から君が議事録を作成して、お客に送ってくれないか。その中にその依頼も入れておいてほしい・・・」

葛城は、紗耶香をかばったのか、勝手に不始末の尻ぬぐいを押しつけてきた。

だが、紗耶香はそもそもお客との会議のメモを取っていなかった。

これでは議事録の作りようがない。


仕方がないので、交換した名刺と旅行の日程を教えてもらい、葛城と紗耶香の記憶をたどり、PCを借りて議事録らしきものをでっち上げた。

遅いランチをいっしょにどうかと誘われたが、とても3人でテーブルを囲む気になれなかった。

それで、ランチを辞退して早々にABC商会を出た。

・・・どうにも腹が立ってしかたがない。

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