31. 魔性の女(19)
古納戸ムハマドの顧問弁護士から意外と早く連絡があった。
彼の方でも会いたがっているというので、指定の日時に日比谷の弁護士事務所で会うことになった。
弁護士事務所の会議室に現れた古納戸ムハマドは、大柄で胸板が厚く、浅黒い顔に鷲の嘴のような鼻と鋭い目をした典型的なアーリア系人種の体形と風貌をしていた。
外国人の年齢はよく分からないが、落ち着いた物腰と首の皺から、じぶんよりもかなり年上のようにも見えた。
若い女性弁護士が互いを紹介したが、握手はせずにテーブルを挟んでしばらく睨み合った。
「古納戸というお名前からすると、日本に帰化されたのですか?」
英語で話しをと前振りをしたが、
「ああ、日本語でどうぞ」
というので、まず軽くジャブを繰り出した。
「帰化はしていません。長くスリランカと日本を行き来して商売をしているので、日本では日本の名前にしています。その方が商売に便利です。本当の名前は、ムハマド・ヘルナンドです」
ヘルナンドは、カードやら何やらで膨れ上がった大きな牛皮の財布から名刺を取り出した。
話しぶりから実直な人柄のようにも思えたが、親の敵を目の前にしたような、今にも喰いつきそうな顔が恐ろしい。
だが、委細構わずに、
「ヘルナンドさん、そもそもあなたは紗耶香と正式に結婚しているのですか?」
と二本目のジャブを繰り出した。
「正式に結婚していなくとも、配偶者に相当するひとの不貞によって長年の愛情関係が崩壊すれば、その不貞相手に損害賠償請求はできます」
あわてて横やりを入れた女弁護士は、話を正式結婚云々の方へもって行きたくないようだ。
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