27. 魔性の女(15)
未亡人のエミリー専務は、タイガーレディーと異名を取る辣腕の実務家だが、ここ数年は重いリウマチを患って入退院を繰り返し、六本木の本社にはほとんど出社していなかった。
ひとり娘の麻衣子は音大を出てコンサートピアニストを目指したが、葛城と結婚して息子ができてからからは、ほとんど家に引きこもっていた。
タイガーレディーは、享楽に金と時間を浪費する遊び人と決めつけ、葛城をお飾りの社長にはしても株も代表権も与えることはなかった。
上海からもどるとすぐに、葛城社長はシカゴへ飛ぶといい出した。
電子レンジを大量に買うというチェーンストアーの本部がシカゴにあり、バイヤーのトップに会って注文の確約をとりつけるつもりだ。
ついでに全米を回り、カタログハウスなど他の顧客にも電子レンジを売り込むという。
だが、紗耶香を通訳として連れて行くので、すぐにABC商会に転籍させて秘書室長の肩書を与えたいというのには驚いた。
「出し抜かれた」
という思いはあったが、すぐに宮原女史に転籍の手続きを命じた。
それから、改めて紗耶香の履歴書と職務経歴書をチェックした。
都立高校出身で、中堅の私立大学では社会学部卒業というのは知っていた。
しかし、米国留学の履歴はなく、英検などの資格取得の記載もなかった。
どこで英会話をマスターしたのだろうか?
中途採用の面接のときも、PCに詳しくEXCELが得意だと売り込んだはずだ。
だが、英会話が得意とはいってはいなかった。
履歴書では新卒で入社した前の会社は金融関係で、英語には縁がなさそうだった。
思い切って、この中堅の消費者金融の本社の人事部に電話してみた。
人事部長は話好きなひとのようで、何でも教えてくれた。
そこで分かったのは、新卒で入ったこの会社で4年間働いていたというのは事実ではなく、直近の2年弱しか在籍していなかった。
社会保険はこの会社ではじめて取得していた。
ということは、その前の2年ほどは無職で無保険だったということだ。
では、学校を出てから2年間は何をしていたのだろうか?
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