26. 魔性の女(14)
翌日も長い会議をしたが埒が明かない。
北米の規格に詳しい日本人技術者とプロダクトデザイナーを紹介してもらおうと、上海JETROへ出向いた。
それから10人もの技術者やデザイナーと面接し、コンサルタント契約するまで上海でひと月近く過ごすことになった。
帰りの飛行機で、いつもは能弁の葛城社長がめずらしく無口だった。
現地子会社の幹部が頼りないのと、新しい事業には多くの優秀なマンパワーと資金が必要だと思い知ったのだろう。
・・・だが、社長ながら、彼には人事権も資金調達の権限もなかった。
創業者が米国留学した先の大学で知り合った日系二世の娘と結婚して現地にとどまり、日本の陶磁器などを輸入するABC商会を創業した。
50年ほど前のことだ。
その後、日本の大手家電メーカーの北米代理店となって財をなし、ひとり娘の麻衣子が生まれたこともあって本社を東京に移し、家族で田園調布に住むようになった。
だが、大手家電メーカーは北米に自前で販売網を構築して直接ストアーなどに売るようになった。
ABC商会は、それまで大得意先だった大手家電メーカーに対抗して、北米のカタログハウスやチェンストアーストアーなどから自社ブランド製品の調達を請け負い、韓国やフィリピンや台湾の中小メーカーにOEM製造を委託するブローカーになり、なんとか命脈を保ってきた。
創業の時から株のシェアは、代表取締役の創業者が60%、専務取締役の妻のエミリーが40%だった。
が、3年前に創業者が急逝し、その60%の持ち分はすべてひとり娘の麻衣子が相続し、代表取締役になった。
葛城誠一は麻衣子と結婚しても、ABC商会の経営に関わることはなかった。
だが、創業者が死去した直後に、広告代理店の部長職を辞めて、急遽ABC商会の社長職を継ぐことになった。
親族で創業者のあとを継げるのは、とりあえず娘婿の葛城誠一しか見当たらなかった。
そうはいっても、代表権も株も持たない創業者の娘婿では、人事も資金調達も思うにまかせるはずがなかった。
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