24. 魔性の女(12)
その次の土曜日の正午ごろに電話をしたが、紗耶香の携帯は応答がなかった。
やむなく家に帰った。
あれから由布子は、一日中二階の寝室に閉じこもったままだった。
咲恵とふたりで夕食を作り、お膳を寝室の扉の前に置いた。
だが、いつまでも手をつける形跡がない。
仕方がないので、その夜は咲恵のマットレスを借りて居間で寝ることにした。
ともかく、平日は定時に退社し、週末は一歩も家から出ない生活が続いた。
しばらくすると、葛城社長から上海出張への同行を頼まれた。
今までの小型家電品のラインナップに電子レンジを加えたのが奏功し、北米の販売代理店がチェーンストアから大きな注文を取り付けていた。
これはビッグビジネスに飛躍する大きなチャンスだった。
だが、電子レンジはまだ試作品の段階なので、これを量産体制にもっていくのが今回の出張の目的だった。
フライトが安定飛行になると、葛城社長はクルーの中に顔見知りのCAを見つけ、ワインを手はじめに、ウイスキーやブランディーをどんどん持ってこさせた。
「今まではOEM一辺倒だったが、今回の電子レンジから自社ブランドも考えよう」
葛城社長は酒の力もあってか、すっかり大物経営者気取りになっていた。
そんな酒の上での気宇壮大な話が続いたあと、
「・・・ああ、紗耶香はいいねえ」
急に話題が変わった。
とたんに、嫌な気分になった。
黙って聞いていると、
「英語の会話力がすごい」
と褒めたあと、
「ベッドでもすごい」
と、にやけた顔を寄せて耳元でささやくようにいった。
嫌味もてらいもないその顔は、玩具をもらった子供が、その玩具のよさを嬉々として親に話すような無邪気さにあふれていた。
「昼は有能な秘書。夜は娼婦!」
などと、あたりに聞こえるのもお構いなしに、紗耶香への賛辞はとめどなく続いた。
・・・これで、どうして紗耶香が電話に出ないか分かった。
だが、この巨漢の色男に組み敷かれてあえぐ紗耶香の痴態を思い浮かべ、殺したいほどの嫉妬に駆られた。
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