第14話 次の質問

「――初めて会った時の印象」


 プロトが質問の一つを適当に読み上げる。


「「人見知り」」


 通話のラグもあるのにイナリとホウキは同時に呟く。


「――誰が?」


 プロトの質問に返事はなく、女性陣二人は「やよな」「だよね」と盛り上がっている。

 そんな反応を見てプロトは気付く。


「あぁ、僕のね」


「初めて会うた時なんて兎人みたいにビクビクしてて――」


「トジンって何だよ」


「ウサギの耳が生えた獣人、知らんの?」


 イナリは当たり前みたいに言う。

 ウサミミのトジンなる人物は有名なのか?それともアニメや漫画、ゲームなんかのキャラクター?もしかして自分だけが知らないのか?とプロトは自分の世間への疎さを心配してホウキの反応を伺う。


「知ってるか?」


「知らない」


 ホウキは淡白に否定した。


『お?五期生かな?』

『Vモンの子ってちゃんとロールしてる子多いよな』


「ホウキんときはどうやったん?」


 イナリが訊く。


「わたしの時は一言も話してくれなかったよ。わたしから話し掛けて、やっと話せた」


 ホウキがそう答えると、またイナリとホウキは二人でプロトがいかに人見知りなのかを語り出す。

 その女子トークがあまりに収拾がつかなそうだから、


「知らない人と話しちゃいけないって博士に言われてるんだ。はい、次。イナリの印象は?」

「僕は声がデカい」


 と進行した。


「わたしは食いしん坊」


 ホウキは答える。


『博士って誰』

『そんなこと言ってないけど』

『知らない人とも仲良くしなさい』

『博士はプロトのリスナーのこと』


「多分見てる人と差はないよな。イナリ、裏でも配信と変わんないし」


「ほんとそう」


「ホウキは……何だろ。照れ屋とか?」

「ソロ配信だと結構恥ずかしいセリフ言ってるから凄いなぁと思って見てた」


 マジカルもそうだが、まだ配信回数が四回だけで、学生ということもあって長時間の配信もないからホウキはまだ設定に忠実である。


「ウチは声優さんみたいやなぁと思ったかな。マジカルマジカルも可愛かったし。可愛いだけやなく、なんか大きいというか声の張り?みたいんがプロっぽいわぁって」


 イナリは語気を強めて絶賛する。


「待って。二人はわたしの配信どのくらい見てるの」


 少し声の端が震えていて、ホウキは通話越しでも照れているのが分かる。


「今のとこ全部見てるよ」


「ウチも二人の配信は全部見てるかな」


「え?僕のも見てんの」


「見てんで。そんで、言おうと思てたんやけど、プロトお前ええから早よゲーム配信せえよ」


 ホウキのときとは打って変わって、説教するみたいにイナリは言う。


「してたけど」


 プロトは丁度先日に雑談を兼ねてソシャゲーの配信を行なったばかりだ。


「ガチャ配信はガチャ配信やろ」


『言われてるぞ』

『もっと言ってやれ』

『今のところゲーム上手い詐欺』


「……ほらな、コメントもゲーム上手い詐欺言うてるやん」


「じゃあさ。今度、エーピックスコラボしようよ」


 ホウキはプロトへの辛辣なコメントにクスクスと笑いながら提案した。


 人気のバトルロワイヤルシューティングゲーム『Awesome - PlayerX』、通称はA-PXだったりエピだったり、他にも少数派だがアピだったりする。

 エピはプロトが前世で活躍していたゲームタイトルである。


「もう逃げられへんで」

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