第51話

ゾッとする異形の子どもたちが溢れる街。ザックは無言で歩いていた。

「おねえさん、待って」

テリーナを呼ぶ声がして振り返る。兎の耳が頭から一つだけ生えた小さな女の子が手招きしている。

「人間?どこ行くの?観光?」

「人探しをしてるのだわ。ええと」

「あ、わかったよ。ヨウユウさんでしょ」

テリーナが驚く。

「その人、魔族……あなたたちの中でも有名なのかしら?」

「うん。ヨウユウさんは私たちに美味しいお菓子をくれる人だよ」

聞いた話と違う。ヨウユウは人間と奴隷商売をする悪人ではなかったか。

「私たち、ね、病気なの。私はまだ軽い方だけど」

「病気?」

ザックが聞き返す。ソンリフはザックとテリーナの腕を静かに引いた。

「どうしたんだよ?」

「……。ごめんな、嬢ちゃん。俺たち急いでるんだ。ヨウユウさんに早く会わなきゃいけない」

「あ……そっか、ヨウユウさんはあっちに行ったよ」

右を指差す。片耳兎の女の子は、真っ直ぐな瞳でザックを見つめていた。

(っ……)

それを振り切って右の道に向かう。


「かわいそうなのだわ……」

「俺もそう思わないわけじゃない。でもな、無理なんだ。ああいう子は生まれたときから早死にすることが決まってるし、遺伝するから子どもも期待できない。残念だが、未来がないんだよ」

ザックとテリーナは黙ることしか出来なかった。

「子にも遺伝するのか、病気が」

「『呪い』という名の病気だ。魔力回路の奇形。ナモナキにいる魔族がこうなのはリュウガは知ってたはずだが、お前らには言わなかったんだな」

「250年前からそうなのか……」

「1000年前からだ」

「……え?」

「大陸が3つの国に分かれた戦争が起きたとき……1000年前から、この地域は『そう』なんだ」

「歪な魔力回路を持つ魔族がここで暮らしていたんだな」

「……正確には、」


「魔族の半数がああなった名残なんだ、この光景は」


ザックの呼吸が足が止まる。魔族の半数が、こうなった?


「1000年前に、何があった……?」


「戦争のきっかけを知ってるか?人間」


「知らない……。なんなんだよ、戦争のきっかけって」


「魔力回路の異常だ。生まれる子が奇形になる『呪い』が魔族の間で流行ったから、人間と魔族の間に亀裂が入った」


ザックもテリーナも知らなかった話だ。


「待ってくれ、魔力回路の異常は魔族の話じゃないのか?人間にどう関係するんだよ」

「……お前は、あれが『魔族か人間か区別がつくのか』?」

息を呑む音。テリーナが目を泳がせた。


「魔力回路の異常で完全な人間体にも魔族体にもなれなくなった存在が起こした戦争……それが1000年前の戦争だ。


1000年前の戦争で負けた、人間と魔族の境界線が曖昧になった存在の子孫が身を隠していた場所。それがこのナモナキだ」

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