第39話

「「「国?」」」

皆の声が重なる。

「国?お父様は演説で『大陸統一後の国は認めない』と……」

「て、テリーナサン」

ザックがテリーナの右肩をツンツンつついて制止する。

「一応身分がバレる話はしない方がいいと思うぜ……」

「あらっ。たしかにそうなのだわ……」

「そこの2人は番かな?」

レウォがさらりと言った。ザックは目を白黒させた。

「何故そう思うんだ!?」

「え。距離が近いから。魔族には種族によっていろいろな番の形があるが、俺たち八咫烏族は滅多なことがない限りは番を変えない。相性が良いと思ったメス……すまない、女性とはずっと一緒にいたいと強く思うんだよ。君からはそれを強く感じた」

途中、言い直した。レウォは苦笑する。

「……すまない。番という言い方もあまり良くないものなんだよね。頭では分かってはいるんだが……なんせ10年前に里に降りて来たばかりだから、人間の言葉に慣れなくてね」

「10年前?」

「あぁ。立ち話も何だし王宮へ案内しようか」

「王宮?平民の俺が近づいていいのかよ?」

ザックが言う。隣のテリーナが一瞬目を見開いたが、彼は気づかなかった。

「え?平民?」

「普通の立場の人間が、王族の顔を見てもいいのかよ?」

「…………」

ゾナリスが目を泳がせる。

(ザックぼっちゃんは『統一後』しか生きていないのに。20年じゃあ『シャフマ人』の王族のイメージは変わらないということ……。あの父親の元で育っても……)

レウォは目を細めて微笑んだ。

「人間の国にはそういう王もいるんだね。大丈夫だ。俺たちの王は『みんなに平等』な男だ」


ザックたちはレウォに着いて歩く。

「ソクジュの国の歴史を教えてください、レウォさん!」

デヴォンがメモ帳を取り出す。

「ソクジュの歴史か。期待されても全然話すことなんてないよ」

「そんな謙遜せずに!」

「ソクジュは10年前に出来たばかりの国だ。王が勝手に里に降りて来たから出来た」

レウォはそれだけ言って口を閉じた。

「か、勝手に?どういうことかしら?」

「なるほど。いろいろと腑に落ちたわい」

ずっと黙っていたリュウガが低い声で言う。

「『崇められた』んじゃな。鳳凰族辺りじゃろう」

「……!」

「なんじゃ。別に珍しい話でもないわい。我も崇められたことはある。何度ものう」

「なぁに?それぇ」

ラビーがいつの間に買ったのかリンゴ飴を舐めている。

「魔族はその性質故に崇められることがある。強大な力で救ってくれると思われるんじゃ。いわば『神格化』じゃな」

「なんかすご……」

ヴァレリアもリンゴ飴を舐めている。

「この国もそうできたのじゃな。10年か。それでここまで発展したのは素直にすごいとは思うがのう。長くは続かんじゃろう」

「っ……王を悪く言わないでくれ」

「……」

リュウガが口を閉じた。

「そろそろ着くぜ。あれが王宮だ」




〜ソクジュ王宮内〜


大きな派手な鳥が翼を広げて立っている。

「……まさか、あれじゃあないよな?」

震えるザックの声。

「あ、王だ。翼の根元を広げて伸びしてる。気持ちよさそうだな」

「あれかよ!えっ!?あれかよ!?」

ラビーは目を輝かせているが、ザックは何がいいのかサッパリわからない。

「あ、こっちに歩いてくる。オジサンちょっと怖いな」

皆が頷く。怖い。

「あぁ!美しい!なんて美しいんだ!」

翼を大きく羽ばたかせる。

「私の翼……!美しい!これぞ鳳凰の血筋!」

辺りに虹色の羽が散らばる。たしかにうつくしい、が。騒がしい。

「おお!人間!私を見に来たのか」

鳳凰が大きな翼をファサファサさせながら話した。

「存分に見るが良い!美しい私の!翼を!!!」

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