第7章『ソクジュ』
第38話
〜フートテチ 西〜
〜砂時計喪失まであと78日〜
2日間の旅を終え、機関車から降りる一行。
「ここが終点なのだわ」
テリーナが腕を広げて深呼吸をする。
ザックが東を見つめる。
(魔族の暮らす土地、フートテチ)
人間とは違う生き物の土地、その入口には大きな門が建っていた。
「三方を山に囲まれていて、さらに門か。かなり厳重だね……どうしよう?」
ゾナリスの言う通り、簡単には入れそうもない。
「門は新しいみたいだねー」
「そうじゃのう。我が前に来たときはこんなもの建っていなかったわい」
「え、昔からあるものではないんですか?」
デヴォンが聞くと、リュウガが首を横に振った。
「少なくとも250年前にはなかったのう」
「200年前には建てられていたかもしれないということだな?」
「新しくないじゃん」
「そうか?」
「ね、ね、ね。いいからぁ、どうするのぉ?これ」
ラビーがザックの周りを跳ぶ。
「開けてくださらない?って言ったら案外開けてくれたりして」
テリーナが門番のところへ駆ける。
「いきなり攻撃されたらどうするんだよ!?」
ザックたちも慌ててそれを追いかける。
「なぁ、今更だがフートテチの入口はここしかなかったのか?」
「そんなわけないじゃん……そうだったら他の地域と接してるとこほぼ山になるしー」
「だよな!?じゃあなんでここから入ることにしたんだ?」
走りながら早口で喋る。
「ここはフートテチ西で一番栄えてる地域だから。こんな風に門があるのが何よりの証拠……。ストワードからの電車の終着駅を建てられてるのもそうだね」
ゾナリスが解説する。
「アレスさんの考えだよ。なるべく安全なルートを通った方がいい。端的に言うと栄えてるところの方が治安が良いからね」
「門番さぁーん!開けてぇー!」
ラビーが大きく手を振る。
「そんな簡単に開くわけがないだろう。何のための門………え?」
ギイイーーー……。簡単に門が開く。
「わぁい!入れるぅ〜!」
「いや罠でしょ絶対!こういうときは周りの木から矢が振って来るんだよ」
「デヴォンくん、それどこの知識……? でもラビーぼっちゃんも一応ゆっくり進もうか」
ゾナリスが苦笑する。
門の外は背の高い木が生えている半分森のような場所だったが、門の中は違う。
「わぁ……すごいのだわ……」
そこはストワード中心部と変わらないほどの人口が住む、商業の街……。
着物を着た人間が物を売りに、買いに来る場所。
「ここがフートテチ西、ソクジュ地域だね」
ザックがゾナリスの持っている地図を覗き込む。
『即珠』……フートテチ語でそう書いてあった。
「ふぅむ。随分様変わりしたのう」
リュウガが鼻を鳴らす。
「見ろ、魔族が普通に出歩いておる。しかもあんなにたくさんじゃ」
街には猫や狼の耳としっぽを隠さずに走っている少女や少年、角につける飾りを選んでいる女、肉を運んでいる腕に鱗が生えた壮年の男……とにかく様々な魔族たちがいた。
「魔族があんなにたくさん!すごい!!」
デヴォンが身を乗り出す。
「リュウガさん!あの鱗の生えた種族はなんていうんですか?ぼ、ぼくは本でも見たことがないです!」
「あれか。あれはのう……」
リュウガが暫し目を閉じる。
「……魔魚族じゃ。ストワードでは知られておらんのも無理はない。特別な魔族じゃからのう」
「特別……?」
デヴォンが首を傾げる。リュウガは口を閉じたままだ。
そのとき、バサバサと翼を動かす音が聞こえた。ザックはギョッとする。1.8mほどの……人間の男の身長に程近い大きなカラスが目の前に降りてきたのだ。
「フートテチは初めてかな?お客さんたち」
カラスが喋る。リュウガが龍の姿で喋るのと同じ原理だろうか。
「我は魔族じゃからここが故郷じゃ。他は初めて来る。……おぬしは八咫烏族じゃな」
「いかにも。八咫烏族のレウォだ。あぁ、変化を解こう」
レウォが人間の姿になる。長い黒髪を後ろで一纏めにした細身の青年だ。切れ長の目が美しい。
「ようこそフートテチへ。人間の皆さん、歓迎するよ。ここは西地域ソクジュ。美しい王と溢れんばかりの富を持つ『国』さ」
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