第37話
〜ストワード 機関車〜
「車内販売でお菓子いっぱい売ってたよぉ〜」
ラビーが両手にチョコレートを持って座る。
「クッキーもあったしー。ししょー、食べる?」
「煎餅はあったか?」
「それはなかったよー」
「煎餅とは何かしら?」
ヴァレリアがクッキーの袋を開ける。テリーナの質問に、リュウガがあくびをしながら答えた。
「ふぁあ……。煎餅はしょっぱくてかたい菓子じゃ」
「菓子なのに甘くない?不思議なのだわ」
「ふん、フートテチの民はみんな食っておる。バレリア、我は横になる。しっぽを出すぞ」
「はいはい。奥座って」
リュウガが座席に横になる。真っ赤なしっぽが尻から伸びた。
「すごいのだわ!」
「触るな。そろそろ脱皮しそうじゃ。落ち着くまでは刺激があると傷になる」
リュウガがまたあくびをする。
「ししょー、寝なよ」
「うむ。我は少し眠る……魔力の回復をせねば……」
皆は知らないが、リュウガは耐久実験所から抜け出す時にかなりの魔力を消費していた。さらにヴァレリアやザックたちの無事を確認するまでは気が抜けずにいたのだ。
「……ところで」
「……あー」
テリーナとヴァレリアの目が合う。
「ヴァレリー……いえ、ヴァレリアさんのお師匠さんは魔族の方だったのね」
「まーね。テリーナ、まさかこんな形で一緒に外に出られるとはね」
少女2人が同時に吹き出す。
「ふふふ、語り合った夢が叶いそうなのだわ」
「うん、ウチもなんか楽しい」
「え?あんたたち、知り合いだったのか?」
ヴァレリアが頷く。
「一緒に外に出るのが夢だったんだ」
「外に出るのが、夢?」
「えぇ」
「……そうか」
ザックはそれ以上は聞かなかった。
ゾナリスがコーヒーの入ったコップをザックに渡す。そして隣に静かに座った。
「む……」
リュウガのしっぽがゆらゆらと動いている。
「……うぬぅ……われはうどんがよいのじゃぁ……」
寝返りを打ちながら寝言。ゾナリスとザックは顔を見合わせてクスクスと笑った。
「ぼっちゃん、今回の旅は目的と制限時間があるね……。でも、俺は出来る限り楽しもうと思っているよ」
ゾナリスが一口コーヒーを飲む。ザックも無言で頷いた。
「リュウガサンの故郷か……どんなところなんだろうね」
「オジサンが地図を描こうか」
ゾナリスが紙とペンを持ってきて簡単な地図を描く。
「フートテチ地区はこの大陸の東に位置している。で、俺たちが目指すのはこの東の湖を越えた先にある〈人魚の楽園〉だ」
「フートテチは大きく5つに分かれている。中央、東、北、西、南だよ。で、俺たちがまず向かうのは西」
「ここは鳥の魔族たちが暮らしている。人間とは友好的な種族だよー」
「鳥……」
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