第35話

「東の果てに行くのか……!」

「あぁ、あんたが行くのか?ザック」

「もちろんだ!」

「っ……」

「アントワーヌサン」

アントワーヌが何か言おうと口を開いたが、アレストが制止する。

「結果オーライだろう?」

「……まさかこうなることが分かっていたのか?」

「心外だねェ……。『砂時計』の件は今俺も知ったところだぜ?その後は……まぁ俺が今シナリオを考えた」

「アレスッ……」

「どうどう。ふふふっ、あんたが娘を想う気持ちは伝わっているよ。だが物理的に直接救うのは無理だ。あんたはこの大陸の大統領だぜ?」

ぐぬぬ……。アントワーヌが低く唸る。

「ザッカリー!!!僕の娘であるテリーナを二度も傷つけることになったら、今度こそ許さないのだ!」

「え?二度……?あ!家を焼いちまったからか!そ、その件は本当に申し訳な……」

ザックが深く頭を下げる。

「……うん。そうそう、その件だ。あんたの罪は重い。だからテリーナサンの『砂時計』をなんとかすることで罪を消そうということをアントワーヌサンは言いたいんだよ」

ザックが「なるほど!」という顔をする。

(これは俺の人生にとってもチャンスということだ!よし、東の果てに行ってやるぞ!)


ドアが開く。

「ザックぼっちゃん、話はつけられた?ヴァレリアちゃんの怪我が落ち着いた。まだ彼女は弓は引けないけど、制限時間があるんだろう?」

ゾナリスの言葉に頷き、「早速行く!」とドアの方に駆けるザック。それを見てアレストが微笑む。

「ふふふっ」

「アレスト、『砂時計』の話はしなくていいのか?」

「……うん。今は言わないさ」

アレストが曖昧に頷いた。

「ザックがもっと強くなったら言うよ。俺たちの血の問題だからね」


「いつかは話さないとならないだろう」



「……ところでアントワーヌサン、さっきからテリーナサンの姿が見えないが、どこかに出掛けたのか?」


「え?」





ザックとラビー、ゾナリスが病院へ向かう。

「ラビー、珍しく大人しかったじゃないか。いつも父さんの背中に抱きついて騒ぎ立てているのに」

「だって父さん、すごく悲しい顔してたからぁ……」

「アレスさんが?」

「うん……。父さん、なんか隠してる……僕のこと嫌いになったのかなぁ……」

「それはないだろう。だが、隠していることがある……か」

(『砂時計』って一体なんなんだ?父さん、何を隠しているんだ?)


「ザック!ラビー!リスおじ!」

ヴァレリアの声だ。ザックが軽く右手を挙げる。

「ヴァレリア、怪我は大丈夫か?」

「もう動けるしー。ってかオッサンは?まだ見つかってない感じ……?」

ザックが頷く。

「も、もう……迷惑かけすぎだし……」

「おねーちゃん、僕が絶対探すよぉ……!」

ラビーがザックの影に隠れて言う。

「ん?なんで俺の後ろから言うんだ?」

「いいじゃぁん!と、とにかくぅ!おにぃちゃんも早くリュウガ探しに行こ!」

「それはもちろんだが。デヴォンも探すぜ?」

「二人で一緒にいたりして……はははっ、それはないかな?」

ゾナリスが笑う。

「ってかさー、オッサン探したら今度こそ解散?あんた、罰はもういいわけ?」

ヴァレリアがザックから目を逸らしながら言う。

「罰をなくすために、フートテチの東果てに行くことになった」

「!」

ヴァレリアの顔が明るくなる。

「ウチも行くしー……ししょーも行く」

「また着いてきてくれるのか?いいんだぜ?ここで解散でも」

ヴァレリアが首を横に振る。ラビーがザックの背中をつついた。

「いいじゃぁん!おねぇちゃんも!一緒に行くのぉ!」

「うわっ!うるさい!!わ、分かったよ。もちろん来てくれるならありがたいからね」

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