第24話
〜地下〜
「......あれ......?」
デヴォンが目を開けた。
「ん......?」
長い間深い眠った後に突然目が覚めたような浮遊感。クラリとする。
「ここはどこだろう。地下みたいだけど。......うわ!?」
目の前には瓦礫の山。
「な、なに!?どういうこと?えっ」
ゾナリスが倒れてからの記憶が無い。
「ザックたちはどこにいるんだろう。探さなきゃ」
ヨロヨロと立ち上がって塞がっていない方の通路に向かった。
ローブ姿の大人が向こうから歩いてくるのが見える。
(しまった。僕はここに連れてこられた人間だ。隠れなきゃ)
慌てて隠れる場所を探すが、そんなに都合の良いことはなく。
(逃げ......)
「あ、所長。お疲れ様です」
「お疲れ様です、所長。もう歩けるんですね」
「え......あ、うん?」
ローブ姿の男女二人はデヴォンのことを何も不審に思わないようだ。
「どうしたんですか所長、不具合でもありました?」
「い、いや。僕は所長!そうそう、所長だった!ははは」
「「?」」
「じゃあね!次の仕事に行くから!所長として!」
デヴォンは二人に手を振って走って逃げる。
「スタン所長ってあんなにフランクな人だっけ」
「表情も明るかったような気がするわね。実験は成功なのかしら?」
(なんだ所長って!意識を失っている間に何かしたのかな、僕)
(いや、それよりも可能性が高いことがある。僕がずっと抱いていた『希望』だ)
走って出口を探しながら、僅かに考えていた希望に思いを馳せる。
(僕には『兄弟』がいる。魔法の人工授精ならばいてもおかしくないはず!)
(そして今日、それが分かった......僕にも)
ザックとラビーのそっくりな顔が脳裏に浮かんだ。
(僕にも、兄弟がいたんだ!)
〜ストワード 東〜
「蒸気機関車に乗せて......!お願い......!」
ヴァレリアが駅員に頭を下げる。
「そう言ってもなぁ。君の隣のオジサン、病人だろう?最近ストワードで流行ってる原因不明の熱病かもしれない。空気感染するって噂だ。他の客に迷惑がかかる。乗せられないよ」
「う、伝染らない......!」
根拠はない。が、そう主張するしかないのが事実だ。
「うーん。君が車両を一つ貸し切れるほどのお嬢様だったら話は別なんだけどね......気の毒だけど、そうじゃあないんだろう?その辺の病院で診てもらってから来なよ」
「......ヴァレリア......ちゃん......」
これは病気ではないのだ。魔力の異常増幅。医療でどうにかなる問題ではない。
「っ......こうなったら仕方ないし!」
ヴァレリアがゾナリスを置いて女子トイレに駆け込む。メイクを落として、髪を解く。リュックに入れていたフリルたっぷりのスカートを履き、動きやすいスパッツを脱いだ。
「え......?」
ゾナリスが目を丸くした。彼女はまるで、『良い家のお嬢様』......。
「わたくしが、この車両を貸し切りますわ!」
声のトーンも違う。いつもの低く気だるげな声ではない。良く通る、高く明るい声だ。
「道を開けてくださる?」
靴は動きやすいスニーカー。
「あ、あなたは......?」
駅員も全員彼女の方を見て固まってしまった。
「わたくしは、ヴァレリー・エル・スナヴェル。スナヴェル伯の一人娘ですわ」
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