第4章『賭博師とオジサン』
第17話
砂漠を歩く。永遠とも思える時間を、ただ歩く。
「シャフマには機関車はないの……?」
掠れた声。デヴォンの問いに、ザックは頷いた。
「シャフマにはそんな便利なものはないさ」
日が落ちかけている。
「ししょー、近くに街あるか見て来て。さすがに野宿は不味い気がするからさ」
ヴァレリアが言うと、リュウガが龍の姿に変化して真上に飛んだ。1分もしない内に地上へ降り、人間の姿になる。
「真っ直ぐ進んだ先に街があったわい。1時間歩けば着く距離じゃ」
「宿はありそうか?」
「そこそこの大きさだからあるじゃろう」
「よ、よし。あと1時間だね」
デヴォンが頬を叩いて気合いを入れる。
〜シャフマ 東の街〜
〜中央広場〜
「うわぁ!また負けた!どうなってやがる!」
一つの机と二つの椅子。椅子に腰掛けているのは2人の『賭博師』……。負けたと騒ぐ男の向かい側に座っている男は余裕そうに足を組んでいる。
「おい!てめぇ!インチキしやがっただろ!」
負けた男が黒髪の男のフード……猫の形……の首元を掴む。フードの男は抵抗をしようとしない。
「……んっ、ふふふふふ……」
首根っこを掴まれているというのに、笑っている。
「何がおかしい!インチキしてたと認めろ!金返せ!」
「キャハハッ!!!」
甲高い笑い声。驚いた男が手を離す。
「オジサン、子ども相手にバカみたぁ〜い。はずかしくないのぉ?」
フードが外れる。真っ黒な髪、金の瞳、褐色の肌。
「ボクはまだ17歳だよ?未成年を殴ろうとするなんて……」
―イケナイ大人なんだぁ……。
目を細めて言う少年は、生前のヴァンス=エル=レアンドロと同じ体の色とアレスト=エル=レアンドロの顔を持つ、レアンドロ家の三男……ラヴィオ。
「っ……」
負けた男は目を泳がせる。勝負の行方を観戦していた野次馬たちも、少年の表情から目を逸らした。
強烈な色気、妖艶さ。旧シャフマ王族の持つ、過度だとも思えるほどの……魅惑の容姿。
ラヴィオはそれを生まれながらに理解しており、利用し尽くして来た。
「キャハハッ、ムキになっちゃあダメなんだぁ。ただの遊びだよぉ?キャハッ」
そう言って立ち上がり、チップをかき集める。
「んじゃあもらってくね?ありがと」
王子だったアレストを知っている人間に「アレストの子どもで誰が一番アレストに似ているか?」と質問をしたら、この三男の名前を挙げる人間が多いだろう。
それほどまでに、この少年は……アレストの武器であった狡知と色気を使いこなしていた。
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