第16話

〜シャフマ地区 東端の街〜

「さぁて、ここからっ……!」

ピョンッ!

「シャフマだ!」

ザックが境を越え、それに続いたデヴォンとハイタッチする。

「2週間!長い旅だったね、ザック」

ヴァレリアはジャンプはしなかったがハイタッチはした。

「すっごい。ストワード地区とは別の街なんだねー。あんまし変化はないけど」

リュウガがドスンッとジャンプする。砂漠にしっぽが触れる。

「しゃふま!我は遂に来たぞ!この砂漠の地に!」

腕を組んでドヤ顔。しかし、すぐに姿勢を崩す。

「あっつぅ!?」

「あ、しっぽ焼けてる」

「魔族のしっぽって食べれるんだったかな。フートテチにそういう料理があったような……」

「デボン!おぬし!本なんて開いてないで助けるのじゃ!あちちち」

「でもさー、オッサン。ここからは普通に街に立ち寄るし、その姿だといろいろ不便なんじゃない?」

「む」

ボフンッ!白い煙が上がる。ザックが見ると、中にいたのは髪を下ろして耳を隠した……着物の大男だった。

「しっぽが消えた!どうやったんですか!?魔法ですか!?フートテチに伝わる魔術ですか!?」

「『人間体』じゃ。耳は尖ったままじゃが、しっぽをしまうことくらいはできるわい」

ちなみにさっきまでの……しっぽを隠していなかった姿……は『なんちゃって人間体』だという。

「各々準備は済んだか?じゃあここでお別れだな。あんたたちはシャフマに来たかっただけなんだろう?」

ザックが言う。

「そうじゃのう。我とバレリアはこれからしばらくシャフマ観光でもしようかのう」

「賛成ー。……デヴォンはどうするの?」

ヴァレリアがデヴォンの顔を覗き込む。

「えっ!?ぼ、僕は……ええと」

デヴォンの瞳がザックを向いた。

「もう少し、ザックと一緒にいるよ」

「……!」

「な、名残惜しいとかじゃあなくて!僕、シャフマ語は全部は読めないから、1人だと本が選べないし……」

「……そうか」

ザックが目を細める。

「じゃあ一緒にいよう。だが俺は一度家に帰らなくてはいけない」

「……着いて行くよ」

リュウガとヴァレリアが顔を見合わせて口角を上げる。

「なーんじゃ、デボンがザックと行動するのならば、我らも着いて行かねば!のう!」

「だねー。ま、どっちにしても西に向かうんだもんね」

あぁ、この2人は自分が『ザックに着いて行きたい』と言うのを待っていたのか。デヴォンはなんだか恥ずかしくなり、顔を両手で覆ってため息をついた。


「猫さん!待てよ!」

「ん?」

4人が声のした方を見る。

金髪をした身長の高い女性が、走って猫を追いかけている。

「お前らー!その猫を捕まえてくれ!」

ザックが猫を捕まえると、女性は止まり、頭を下げた。

「ありがとな!助かったぜ!」

「あ、あぁ」

透き通るような水色の大きな瞳が印象的な女性だ。しかし、ザックよりも身長が高い。

(大きい女だなぁ)

ぼーっと見上げていると、女性は「やっべぇ!」と口を右手で押さえた。

「もうライブ始まっちまうぜ!行かねぇとだ!じゃあな!」

ザックの腕から猫を受け取り、長い足で元来た方向へ走る。

「なんだったんじゃ」

「さぁ?……ま、気を取り直して行こうぜ」

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