46日目 花粉症休暇

 二月から始まる私の仕事は、花粉症休暇に入る霧島さんの代わりで、今年で三回目になる。もう仕事の内容も慣れたもので、引き継ぎもすぐに終わってしまった。

「毎年すいません」

 そう言う霧島さんは、私より少し年下の女性である。同性の私から見ても、かわいらしい雰囲気の方だ。

「いえ、大丈夫ですよ」

 私はそう答える。できるだけ明るく、笑うことを意識しながら。


 霧島さんの会社は、いわゆるホワイト企業というもので、社員の為にいろいろな試みが成されている。会社の手続きや福利厚生、食堂なんかもしっかりと整えられていて、色々な会社を見てきた私からしても、群を抜いて手厚い内容になっている。

 花粉症休暇もその一つで、花粉症の体質の社員はその期間休職することが可能になっている。霧島さんは酷いヒノキの花粉症で、二月から六月までの五ヶ月間花粉症休暇を取っているのだった。

 似たようなボランティア休暇というのもあって、ボランティアのためという申請を出せば、三年ほど休暇を取ることも可能なのだそうだ。花粉症休暇もそれと同じような扱いらしい。


 一昨年と去年も五ヶ月間、霧島さんの代わりに働いたことがあったので、仕事はもう十分にこなせるようになっていた。他の社員の人は最近入ったばかりの人になっていて、私が仕事を教えることすらあった。

「兵藤さんは、本当に頼りになるね」

 私はその言葉に、ありがとうございます、と笑顔で答える。

 本来は正社員の人に仕事を教えるのは業務の範囲ではない。しかし、私はあまり嫌な顔を見せずに受け入れた。

 私には一つ望みがあった。契約会社から、今年の様子を次第で正社員の登用もあり得ると聞いていたからだ。私としても、この会社であれば是非働きたいと思っていたのだ。


 五ヶ月間、私は前の年の経験を生かして、気合いを入れて働いた。霧島さんが戻ってくるまで、自分で言うのもなんだが、私は職場の中心になっていたと思う。

 しかし、霧島さんが来ると私はあっさりと契約終了してしまった。

 月末になって、私が挨拶すると、他の人の返事はあっさりしたものである。荷物を持って職場を後にしようとすると、もう職場はすっかり私がいない状態となっている。

 霧島さんは七ヶ月、私は五ヶ月働くのに、この扱いの差はなぜなのだろう。

 夏が終わればブタクサの季節がやってくる。私も花粉症の症状に悩まされることになるだろう。治療をしながらまた仕事を続けなければならない。それが普通のことなのだと自分を納得させることが、酷く辛く感じた。

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