47日目 立体都市

 僕は仕事に向かう途中にある大空洞で、自分の頭上にある街を見つめる。

 この街の外側は角形のでこぼこした四角形の形をしているらしい。僕は一度も外に出たことがないが、写真だけは見たことがある。外壁には太陽光発電のパネルが並ぶ黒い立方体がこの都市の形である。

 都市の全長は数キロメートル。その大きさは今も大きくなっているそうだ。

 何百年か前は、一階建ての建物というものもあったらしいのだが、僕はそういうものは見たことがない。人が住むのは全てマンションになる。マンションといっても昔のマンションは場所ごとに別々の建物だったらしいと聞く。今は一つの建物の中の居場所の一つでしかない。


 僕が街の成り立ちに詳しいのは、かつて家出をしようと計画したことがあったからだ。家出をしようとしても、この町は繋がった一つの建物になっている。僕はその外に逃げだそうと思ったのだ。

 こんな形になったのは、人口が増えたからだとか、経済的な事情が、ということを調べている本で見た。建物は規格が決められて、上部に別の建物を置くことが出来るようになった。建物の上に建物を積んだり、つなげたりを繰り返して、今のような一つの巨大な建物になっていったらしい。

 本を見ても街を脱出する手段は見つけられなかった。全ての事が街という一つの建物の中で完結するので、他の場所に行く必要は無いのだ。


 僕は考えた。上層階は、端まで来ても外には行けない。しかし、一階まで行ってしまえば、どこからでも外に出られるだろう。

 親からは決して下の階には行ってはいけないよ、と言われていたが、それは待ちの外に出ることを防ぐためだったのかもしれない。そんな風に僕は思って、忠告を無視して、下に向かおうと考えた。

 街の中には、古い場所と新しい場所が混在している。そして、古い場所の中には床が壊れている場所もある。僕は、友達と前に遊んでいたときに紐が吊されて、下に行ける場所を見つけたことがあった。

 僕はそこに向かい、垂れ下がっている紐を辿って下にたどり着くと、そこでちょうど紐が切れた。僕は戻れなくなってしまったことに嫌な予感がしたが、どこかで上に戻る場所があるだろう、と楽観視していた。


 あれから二十年。僕は結局、上の階に戻れていない。都市の上の階と下の階は大きな断絶があるのだった。下の階層にきてから、下の階が老朽化が進み、住みにくくなっていることを知った。そして、下の階からは外に出ることができなくなっているのだった。

 下の階の住人は、誰に聞いても上の階からでないと外に出られないと言っている。もしかしたら、上からも下からも外には出られないのかもしれなかった。

 僕は未だに休日には、未だにあの時の老朽化した部屋で垂れ下がっていた紐を探している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る